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桐生正幸 東洋大社会学部教授(本人提供)

安倍晋三元首相銃撃事件で、逮捕された無職山上徹也容疑者(41)は「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のトップを狙ったが実行に移せず、関係が深い安倍氏を標的にした」と供述した。東洋大の桐生正幸教授(犯罪心理学)は、昨年12月の大阪市クリニック放火殺人など近年の大量殺人事件を挙げ、「個人的な恨みの解消を理由にしている点で同じ系譜だ」と指摘する。

桐生氏は、山上容疑者が安倍氏と旧統一教会を短絡的に結び付けている点に着目。「大阪の事件はクリニック全体を自身の問題解決の象徴と見なしていた。今回の事件も安倍氏を個人ではなく象徴と捉えている」と共通点を挙げる。

その上で、インターネットの偏った情報によって本人のゆがんだ認知が強化された可能性を指摘。2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件では、被告がネット検索で京アニが自分の作品を盗作したと思い込んだことが事件につながったとの見方を示し、今回の事件でも「本人が検索するほど、安倍氏と宗教の結び付きを強化させるような情報だけが目に飛び込んできたのだろう」と推測する。

桐生氏は京アニ事件など個人的な問題解決のために起きた近年の無差別殺傷事件を「日本型ローンウルフ(一匹オオカミ)テロ」と定義する。欧米の「ローンウルフ型テロ」は差別に苦しむイスラム系移民らが単独で実行するのに対し、日本型には政治、思想的な意味合いがなく幼稚な点に特徴があるという。桐生氏はこうした事件への対策として、「まずは動機面に着目し、捜査機関が近年起きた大量殺人のデータを集め、犯罪傾向を見ることだ」と語る。

こうした凶悪犯罪に備えるため、例えば電車内で凶器を持った人が現れた際に乗客がどう対応すべきかなどを学ぶ「防犯訓練」を防災訓練と一緒に実施することを提案する。桐生氏は「パニックにならず、被害を抑えるために対策を練ることが重要。事件を人ごとではなく自分自身の問題として考えることが大切だ」と強調した。

2022年07月18日07時12分
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