2022年7月20日 06時00分

 専門職の人を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル(高プロ)制度で、在社した時間と社外の労働時間が月間400時間以上だった人が、2カ所の職場でいたことが厚生労働省への報告で明らかになった。
一般労働者の場合に「過労死ライン」とされる100時間を125時間以上も上回る。当初から指摘された働き過ぎを助長する懸念が現実化している格好だ。(池尾伸一)


"
 高度プロフェッショナル制度 トレーダー、コンサルタントなど5業種の年収1075万円以上の社員を対象に労働時間上限、割増賃金などの規定を除外する。本人同意が条件。
今年3月末時点の対象は665人と、前年から113人増加。導入企業・事業場は21社(22カ所)と1社(1カ所)増えた。健康管理時間の40時間超の部分が月100時間を超えると医師面接を受けさせる義務がある。
"





◆計算上は連日9時間以上の残業

 高プロは専門知識を持つ高年収の人を対象に、残業上限などの規制を外す仕組み。2019年4月に導入された。企業は労働時間の代わりに在社時間と社外で労働した時間の合計を「健康管理時間」として把握する義務がある。
 厚労省が今年3月末までの1年間について、1カ月間の健康管理時間が最長だった社員を報告させたところ、コンサルタントの2事業場で「400時間以上500時間未満」の人がいた。最長だった社員の状況のみの報告で、人数は不明。前年は「300時間以上400時間未満」が最長だった。
 一般労働者の場合は週40時間が法定上限で、月間換算で「約173時間」。労働者側と協定を結んだ場合も残業は「月100時間」(連続なら月80時間)などが特例上限。これは過労死ラインと呼ばれ、超えると脳や心臓疾患で死亡するリスクが高まるとされる。

 2事業場の社員らはこのラインを大幅に上回る時間、労働または在社したことになる。週休2日なら1日平均の労働・在社時間は17時間以上となり、連日残業を9時間以上続けていたのに相当する。
 これに加えて社員全体の平均の健康管理時間が、「300時間以上400時間未満」の職場が証券会社など2カ所であった。「過労死ライン超え」が年間を通じて職場全体で常態化していたことを示す。昨年はゼロだった。
 厚労省監督課の担当者は調査結果に「(健康管理時間が)かなり長いケースが出ており、原因を調べる必要がある」とするが、法律の性質上、引き下げ強制はできない。
労働問題に詳しい佐々木亮弁護士は「400時間以上や300時間以上は健康を害してもおかしくない異常な水準。高プロが働き過ぎを助長していることが明確になり、見直すべきだ」と指摘する。

  ◇

 高度プロフェッショナル制度で、会社にいる時間と社外で働く時間が「過労死ライン」を大幅超過する労働者が続出していることが判明した。コロナ禍や働き方改革で一般の労働者の労働時間は減少傾向にある中、高プロ適用者の長時間傾向ぶりは際立つ。健康確保措置も歯止めになっていない。




◆歯止めにならない「健康確保措置」
 
◆倒れても労災認定されない?

https://www.tokyo-np.co.jp/article/190657