FORDES 8/17(水) 17:00

世界では安楽死を合法化する国が増えるのに伴い、自ら選択し、医師の自殺幇(ほう)助による死を選ぶ人が増加している。これまでの調査によると、大半の人が自殺ほう助を支持している国もある。だが、この問題については、多くの議論もある。

カナダでは先ごろ、61歳で生涯を終えたアラン・ニコルズのケースが注目を集めている。うつ病を患い、自殺願望があるとされていたニコルズは、安楽死の許可を申請した。ただ、同国では現時点では「精神疾患のみ」を抱えている人の安楽死は認められておらず、ニコルズは理由となり得る「慢性的な身体的苦痛」として、「重度の難聴」を申告した。

ニコルズの申請は認められ、実際に安楽死(医師のほう助による死)を迎えることとなった。だが、家族はこの件を警察に届けた。「健康上、ほう助による死が妥当とされるほどの深刻な問題を抱えていたわけではない」と主張している。

■安楽死の対象は国で異なる

安楽死は、医師が処方した薬を患者が自ら服用する「自殺ほう助」と、医師が薬物を直接投与する「積極的安楽死」に分けて考えられている。積極的安楽死を2015年に合法化したカナダではここ3年、安楽死を選ぶ人の数が急速に増加している。

2000年代初めに医師のほう助による死を合法化したオランダ、ベルギーと比べて早いペースで増加しており(国や各州から入手可能なデータで比較)、昨年中にカナダで亡くなった人の3.3%が、医師のほう助による死を選んだ人だった。

認められる自殺ほう助の方法と同様に、末期症状や変性疾患の患者であること、激しい痛みがあること、不治の病とされていることなど、どのような人に安楽死の申請を認めるかについては、国によって基準が異なる。

カナダは昨年、その対象を拡大。ニコルズのように「障害はあるものの、末期症状があるわけではない人」の申請も認めることとした。これについては、障害者支援団体などから非難の声があがっている。

各国の現状
米国の多くの州で認められているのは、自殺ほう助による安楽死だ。ニュージャージー、ハワイ、メイン、ニューメキシコの4州が2018年から2021年にかけて合法化したことを受け、この方法による死を選ぶ人は、大幅に増加している(これ以前には、コロラド、カリフォルニアの両州が2016年に自殺ほう助による死を合法化している)。

積極的安楽死を合法としているのは、カナダのほかベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、コロンビア、スペイン、ニュージーランド。オーストラリアでも、年内に合法化される予定となっている。

スイスでは、積極的安楽死ではなく医師による自殺ほう助が認められている。ジャーナル「アナルズ・オブ・パリアティブ・メディスン」によると、同国では(最新のデータが入手可能な)2019年、1196人がこの方法で死を迎えた。

そのほかオーストリアでも昨年、自殺ほう助を認める法律が導入された。ドイツやイタリアでもここ数年の間に、裁判所がそれまでの判断を覆し、自殺ほう助を認めている。

■2021年に安楽死した人が多かった国

国           2021年    2018年
カナダ        10064人   4480人
オランダ        7666人   6126人
ベルギー        2699人   2357人
米国(一部の州*) 1300人以上  850人以上

*米国で安楽死が合法化されているのは、ワシントンD.C.とカリフォルニア、オレゴン、コロラド、ワシントン、バーモント、モンタナ、ニュージャージー、ハワイ、メイン、ニューメキシコの各州
出典:Annals of palliative medicine, country and state administrations

Katharina Buchholz
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/1d740e7b5773f340874fde833a58538ab9a2cf14&preview=auto