東京都で11月に運用開始予定の同性カップルなどのパートナーシップ制度について、江東区の星野博区議(74)=自民、7期=が区議会一般質問で「少子化の進行につながる」「制度悪用の可能性がある」などと発言し、性的少数者(LGBTQ)らから事実誤認や偏見だと非難する声が上がっている。(奥野斐)

 東京都のパートナーシップ制度 性的少数者(LGBTQ)の生活上の不便を軽減しようと、同性愛者やトランスジェンダーらのカップルによるパートナーシップ関係の宣誓を受け、証明書を発行する制度。都内在住か在勤、在学の人を対象に10月11日からオンラインで届け出を受け付け、11月1日から証明書を発行する。パートナーとともに都営住宅に入居申し込みできるなどの利点がある。今年6月の都議会で制度を盛り込んだ条例が成立した。


◆「間違っていると思わない」撤回、謝罪を否定
 星野区議は20日の区議会で、制度に「伝統的な結婚や家族の概念を変質させ、国家の根幹である婚姻制度、家族制度の衰退と少子化の進行につながることを危惧している」と発言。一方「私は性的マイノリティーの方々への差別主義者ではない」と述べた。制度で同性カップルの都営住宅入居が認められる点などに、疑似カップルによる悪用の恐れがあるとも指摘した。
 議場で別の区議が「偏見だ」と声を上げ、ツイッターでは「差別発言だ」と批判も出た。星野区議は取材に「賛成、反対両方の立場で議論するのが民主主義の基本。少子化につながる懸念があると言っているだけで、間違っていると思わない」とし、発言の撤回や謝罪は考えていないという。
 同区議会の三戸安弥さんのへ あや区議(33)は「当事者を傷つける差別的な発言には憤りを感じる。区議会として謝罪や撤回を求めたい」と話す。同区のLGBTQ当事者らでつくる「クロスオーバー・こうとう」は、星野区議に質問の趣旨などの見解を求める公開質問状を送る準備をしている。
 議会のネット中継を見たゲイでライターの松岡宗嗣さん(28)は「制度と少子化を結びつけるのは見当違いだ。差別的な認識の基に性的少数者の存在や権利を認めない姿勢は問題だ」と謝罪や撤回を求めている。
◆過去にも差別発言繰り返した自民議員
 東京都の区議会では2020年9月、足立区の自民区議が「あり得ないことだが、日本人が全部L(レズビアン)、G(ゲイ)になったら次の世代は一人も生まれない」「LだってGだって法律に守られているという話になったのでは、足立区は滅んでしまう」と述べ、その後、発言を撤回し謝罪した。
 自民党の国会議員では、18年に杉田水脈衆院議員が同性カップルを念頭に「『生産性』がない」と雑誌に寄稿。平沢勝栄衆院議員は19年にLGBTQに「この人たちばかりになったら国はつぶれてしまう」と発言している。
◆「差別的な本心を隠していると判断されても仕方ない」
 早稲田大の森山至貴のりたか准教授(社会学)の話 今回の発言では「危惧」「議論」と一見、中立で理性的な言葉を使っているが、事実誤認を指摘されても撤回しないのであれば、差別的な本心を隠していると判断されても仕方ないだろう。政治家の発言として不誠実だと思う。また、どんなテーマでも賛成、反対に分かれて議論すればいいというわけではない。性的少数者など特定の属性の人たちの権利を脅かす主張が、対立する一方の主張になると考えるべきではない。

東京新聞 2022年9月21日 20時47分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/203877