2022/10/1 18:42

清水更沙

バレエ大国のウクライナから戦禍をくぐり抜け、約4カ月前に兵庫県・淡路島へたどり着いた2人のバレエダンサーがいる。言葉も文化も異なる日本でバレエに打ち込む日々。長期化する軍事侵攻に不安もあるが、「私たちのバレエを通して、ウクライナのことを知ってほしい」と前を向く。再び舞台に立てる喜びをかみしめながら、毎日の練習に励んでいる。

「だんだん生活にも慣れてきて、最近は大阪に出かけることもあります」。こうはにかむのは、西部リビウの国立バレエ団に所属していたスベトラーナ・シュリヒテルさん(22)とネリア・イワノワさん(22)。5月に祖国を離れた2人は現在、パソナグループの支援のもと淡路島で生活している。

2人が所属していたバレエ団では、多いときで月に20回近い公演があった。多忙ながら充実した時間を過ごしていたイワノワさんは、「ステージで踊っている瞬間や舞台を終えた後の達成感が大好き」と話す。

しかし、そんな日常はロシア軍の侵攻で一変した。劇場公演は中止に追い込まれ、レッスンの最中も空襲警報が鳴ると、シェルターに逃げ込む日々。落ち着いてバレエと向き合える環境ではなくなっていった。

そんな同国の苦境を知り、手を差し伸べたのが、淡路島を拠点に活動する針山愛美(えみ)さん(45)だった。ロシア国立ボリショイバレエ学校を首席で卒業した世界的バレエダンサーで、以前からウクライナ出身のダンサーとも交流があった。縁のある両国が戦争状態にあることに心を痛め、「自分にできることはないか」とウクライナのダンサーを淡路島に受け入れることを発案した。

支援には本社機能の一部移転を淡路島に進めるパソナグループが関与。社員寮の提供などで、ダンサーの受け入れ準備を進めた。

日本でサポートが受けられることを知った2人は来日を決意し、慣れ親しんだバレエ団を退団。来日前、母国で迎えた最後の公演は忘れられないといい、シュリヒテルさんは「悲しい気持ちでしたが、団員が集まってくれて『また戻ってきてね』と言ってくれた」。目を赤くしながら当時を振り返る。





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