2022年10月12日 06時00分

 東京都が11月1日から運用を始める「都パートナーシップ宣誓制度」の受け付けが11日、オンラインで始まった。全国の自治体で最も多い人口約1400万人を抱え、多様な人々が生活する都が導入するインパクトは大きく、当事者からは評価する声が上がる。一方、国レベルでは税制など法的に立場が保障される同性婚の議論は進んでおらず、課題も残されている。

◆都内では港、武蔵野など16区市、全国では大阪、福岡など9府県が先行

 制度は、互いを人生のパートナーとして尊重し、日常生活で継続的に協力し合うことを宣誓した2人に、都が証明書を発行する。双方またはいずれかが性的マイノリティーで、都内在住、在勤、在学の18歳以上が対象。証明書があれば、11月以降、都営住宅での同居や都立霊園の使用申請などが可能になる。本人の意図しない形で性的指向を第三者に知られる「アウティング」を防ぐため、届け出から証明書の発行までオンラインで可能。都によると、全国で初めての仕組みという。11日午後6時までに18組が申請した。

 同様の制度は港区、武蔵野市など都内16区市で導入済み。各自治体の制度では、区営、市営住宅での同居などが可能。都は都内の自治体と連携し、いずれかの証明書があれば、相互のサービスが利用できるよう調整中。全国では大阪府、福岡県など9府県がパートナーシップ制度を設けている。

 都は制度を説明するハンドブックをホームページで公開。当事者が直面しやすい教育、就労などの困りごとも紹介する。担当者は「ハンドブックを通じて多様な性への理解を深めてほしい」と話す。(三宅千智)

◆「婚姻の平等」実現にはなお課題

 「東京都という広い範囲で安心して暮らせる制度ができた。呼吸がしやすくなった」。11日に受け付けが始まった都のパートナーシップ制度に早速、申請した茂田もだまみこさん(42)は、新宿区で開いた記者会見で喜びをそう表現した。

 会見には「東京都にパートナーシップ制度を求める会」の山本そよか代表(37)のカップルと2組で登場。ともにオンラインで確認書類などを送信し、会見の席上で手続きを終えた。その間、10分足らず。山本代表は声を詰まらせながら「ずっと願っていた制度。うれしく思う」と述べた。

 制度を心待ちにし、これから申請予定のカップルもいる。同性パートナーと暮らして15年になる加沢世子せいこさん(48)=東京都小平市=は「私たちは家族だと思える大きな一歩。同性カップルを知ってもらう機会にもなる」と話す。

 2年前、加沢さんは病気で子宮摘出手術を受けた。2人の関係性や取り決めを記した公正証書のコピーを病院で見せ、パートナーも術前の説明に同席できた。こうした経験から「都の証明書があれば、伝えるのが簡単になる」と期待する。

 ただ、課題は積み残す。パートナーシップ制度は婚姻と違い、配偶者控除など税制の優遇措置がなく、法定相続人にもなれない。国レベルの議論が必要で、日本は先進7カ国で唯一、同性カップルの権利を保障する法制度や同性婚を認める規定を持っていない。

 こうした現実に、加沢さんは「将来的には婚姻の平等を実現してほしい」と願う。茂田さんも「パートナーシップ制度は同性婚に準じない」と問題視しつつ、「首都東京で制度ができたことはものすごく大きい。進む方向が社会通念で変わる。同性婚も必要という認識への一つのステップになる」と評価した。(梅野光春、奥野斐)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/207649