家電から出る電子基板などの、いわゆる「電子ごみ」。この電子ごみを不正に輸出しようとした疑いで、男女5人が逮捕された。

私たちの家庭から出る電子ごみが、今、海外で大きな問題を引き起こしているという、背景を取材した。

■「日本で売るよりお金になる…」電子ゴミを不正輸出で5人逮捕

10月17日、関税法違反の疑いで、大阪・寝屋川市の輸出業者「興亜産業」の蘇宏光容疑者(46)と通関業者の陳岩英容疑者(49)ら5人が逮捕された。

蘇容疑者らは2022年2月、電子基板など約90トンを「プラスチックの破片」だと税関に虚偽申請し、マレーシアに不正に輸出しようとした疑いが持たれている。調べに対して蘇容疑者は容疑を認め、陳容疑者は黙秘している。事件発覚のきっかけは、大阪税関から警察への情報提供だった。

蘇容疑者らが輸出しようとしていた荷物にはプラスチックの破片が詰まっていたが、奥に電子基板などの電子ごみが隠されていた。その数はフレコンバッグ188袋に及ぶ。

5人はなぜ、ここまでして電子ごみを輸出しようとしたのか。

「日本で売るよりも金になるので不正に輸出した」(蘇容疑者)

家電などから出る電子ごみには高額で取引される金や銅などが含まれていて、5人は輸出先でこれらを転売し、利益を得ていたとみられる。

■タイとミャンマーの国境に日本の中古家電がずらり…なぜ?

電子ごみから金などの物質を抽出する際には有害物質が発生する恐れがあるため、申告せずに輸出することが法律で禁止されている。

2018年にタイのバンコクで撮影された写真がある。少年たちが電子基板を解体しているところだが、周囲にはごみが散乱している。

また、同年に撮影されたタイとミャンマーの国境の川沿いの写真には、家電がずらりと並んでいる。全て、日本から密輸された中古家電だ。

密輸された家電は、レアメタルなどが抜き取られた後に、残った部分が不法投棄され、環境汚染を引き起こしているという。

「子供も大人も、労働環境上で必要なマスクや、灰が飛ばないようにする対応ができない。家電のパーツから有用金属を取り出すために直接火にかける“クッキング”で、有害物質を多く含んでいるものに体をさらしながら有用金属を取る、不適正な処理が実際に行われてしまっている」(環境省 廃棄物規制課 影山凡子さん)

環境省によると、1年間に家庭などから出る家電のうち約2割、418万台が非正規の不要品回収業者に渡り、そのうち40万台ほどが海外に輸出されていると推定されている。

■家電の適切な処分とは

環境汚染を起こさないためには、正規の業者による家電の適切な処分が必要だ。エアコン内を循環するフロンガスの回収もその一つ。大阪・枚方市の関西リサイクルシステムズでは…

「こちらは冷媒のフロンガスを、きちんと回収する専用の機械です。ここでフロンの回収を行ってから、解体の工程に回すようにしています」(関西リサイクルシステムズ 生産課 山田順一課長)

しかし、廃棄物の収集や処分を無許可で行う業者では、こうした処理をされず、そのまま廃棄されている可能性が高いということだ。

「家電リサイクル業界ではマスト、こういう機械を入れるのは普通なんですけど。利益を取るだけの業者さんが、ここまでやられているかは不透明なところもあります。そのまま放出してしまうとオゾン層の破壊、環境の破壊、ひいては温暖化にも影響してくる。そういう問題があります」(関西リサイクルシステムズ 生産課 山田順一課長)

蘇容疑者らの会社では、どのような処理を行っていたのか。記者が現地へ行ってみると…

「右側に見えてきました。遠く離れていても、クリーム色のフレコンバッグが山積みになっているのが分かります。中には、ごみのようなものが入っているように見えます」(記者リポート)

会社を上から見てみると、電線や鉄くずのようなものが山積みになっていた。これらは一体、どこから集めたのか。

従業員とみられる男性にその入手先を聞いたが、「分からない」と答えるだけだった。

警察は、5人が少なくとも3年前から、マレーシアや中国などに不正な輸出をしていたとみている。また、輸出する電子ごみの入手経路については、家電などを無料で引き取る回収業者から集めていた疑いもあるということで、警察が実態解明を進めている。(以下ソース)

10/24(月) 11:01配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/91629bcf724925a959d6a7131e761db3f90a5adb
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