岐阜県御嵩町は10日夜、JR東海のリニア中央新幹線工事で生じる建設残土の処分場候補地の一部に、希少植物群生地として環境省が選定する「重要湿地」が含まれると明らかにした。候補地を選定した時期は2016年だったが、リニア工事への影響を懸念してこれまで公表を見送っていたとみられる。JR東海は「群生地の回避や希少種の移植などを実施する」として、候補地で残土置き場を整備することに理解を求めた。

 町がJR東海に残土置き場として情報提供した候補地のうち、美佐野地区の山林の一部に、環境省の絶滅危惧種リスト(レッドリスト)で「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されるハナノキなどが群生していた。このため、環境省が16年4月、重要湿地に選定。重要湿地に選定されても開発行為を規制できないが、事業者は保全への配慮が求められる。

関係質問、受け付けず
 町は10日、JR東海や専門家らによる公開フォーラムを開催。この中で、美佐野ハナノキ湿地群が重要湿地に含まれることを認め、「JR東海が、盛り土造成で群生地が枯れないようにすべきだ」との認識を示した。フォーラムには住民らが参加し質疑応答の時間も設けられていたが、重要湿地に関する質問を受け付けず、フォーラムは閉会。出席した町民からは議事進行に不満を述べる声も聞かれた。

 閉会後、記者団の取材に応じた渡辺公夫町長は、重要湿地への選定の事実をこれまで公表していなかった理由について「候補地は湿地(そのもの)ではなく、湿地に『隣接している』という認識だった。(重要湿地に選定され)JRはどうする気なんだろうと思った」と釈明。一方、JR東海は「ハナノキ湿地群をできる限り回避する。重要種については移植などの保全措置を講じる」との説明を繰り返した。

 会合から一夜明けた11日には、西村明宏環境相が閣議後の記者会見で、この問題に触れ「その区域で事業を検討する際には、関係自治体や事業者が適切に環境配慮を行うということが大変重要である」と言及。JR東海や町に対し、重要湿地を保全するために十分な対策を講じるよう求めた。【太田圭介】

毎日新聞 2022/11/12 08:58(最終更新 11/12 08:58) 868文字
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