平松 類 2022.11.10

眼科の視力検査でボヤけた「気球」や「赤い屋根の家」を見るのはなぜ? 「赤と緑、どっちが見やすいですか」は何の検査? 判断に迷うときはどう答えればいいのか?などなど、「視力検査にまつわる素朴な疑問」について、メディアでお馴染みの眼科専門医・平松類医師が解説します。



ボヤけた「気球」や「赤い屋根の家」を見るのはなぜ?

眼科に行くと、台に顎を乗せて「気球」または「赤い屋根の家」の画像を見る検査があります。「しっかり見てください」と言われますけれど、気球や家がボヤけて見えるので不安になる方もいるでしょう。あれは何をしているのでしょうか?

あの検査機器は「オートレフケラトメーター」といいます。屈折値といって、あなたの目が遠視なのか? 近視なのか? はたまた乱視があるのか? 角膜の状態はどうなのか?というのを調べています。目に光を入れてそれが反射で帰ってくる現象を利用すると、大体の近視や遠視がわかり、乱視の状態もわかるという仕組みです。

ただし、この検査には弱点があります。近視や遠視というのは、あなたが力を入れたり、ちょっとした加減で変わってしまうのです。特にお子さんの場合は、“目の調節力”といってピントを合わせる力が強く、大きく測定値がズレてしまいます。そのためお子さんの近視や遠視を正確に測る場合は、目のピント調節能力を弱くするアトロピンやネオシネジンという目薬を使うことがあります。

しかしこの目薬は、副作用としてしばらく見にくくなってしまいます。アトロピンなら2週間、ネオシネジンでも数日見にくくなるのです。大人が視力検査を受けるたびに2週間も見にくくなっていては生活が成り立ちません。そこで大人には、雲霧法(うんむほう)という方法を使います。

雲霧法とは、雲や霧の中にいるとボヤけて見えないようにボヤっとした状況を意図的に作ることで、ピントを合わせる力をやや弱くするという方法です。この方法をしているときは対象物がボヤっと見えます。この雲霧法こそ、気球や赤い屋根の家がボヤっと見える理由だったのです。軽い雲霧を行うことで近視や遠視を多少正確に測定できているのです。

では、次に受ける「空気が出る検査」は何なのでしょうか?




目に空気を吹きかけるのはなぜ?
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