Innovative Tech
2022年12月07日 10時00分 公開
[山下裕毅,ITmedia]

Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。




 電気通信大学野嶋研究室に所属する四條らの研究チームが発表した論文「Research on the Emotions Expressed by the Posture of Kemo-mimi」は、「獣の耳」(けもみみ)の動的姿勢とそれが与える感情を調査した研究報告だ。けもみみの動きによって、その動作を見ている者がどのように感じるかを調査した。


調査に使用するけもみみの3Dモデル
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 けもみみは動物の耳を意味し、アニメや漫画でよく使われる言葉である。また人型キャラクターが持つ犬や猫のような耳のことも指す。

 犬や猫の耳は人間の耳とは異なり、正面から横へ回転したり、直立したり、伏せたりと自由自在に動かすことができ、周囲の情報を収集するために使用される。また耳の動きは動物の意思や感情を表すと理解されている。よって、動物とコミュニケーションをとる際の耳の姿勢を見ることで、その動物の感情を推定できる可能性がある。

 動物の耳は人間に動物の印象を与えやすいため、VRChatなどのVRソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で使用するファッションアイテムとしてアバターに動物の耳を付けることが見受けられるようになった。このような状況では、けもみみを付けた人型キャラクターは、単にけもみみを付けた人間ではなく、耳の動きによってキャラクターの感情を表現できる人間となる。

 この研究では、けもみみの姿勢とその姿勢によって表現できる感情との関係を調査する。調査のため、球体に耳が生えた制御可能な3Dモデルを作成した。標準姿勢は、垂直方向から20度横に傾いた姿勢とした。

 対象となる姿勢は全部で18姿勢で、これらの姿勢は動物の耳の動きの各方向の9パターン、2つの動作速度の組み合わせである。耳は前後45度、内側20度、外側40度に傾き、90度の回転、移動速度は30度毎秒と150度毎秒でアニメーションされる。

https://www.itmedia.co.jp/news/spv/2212/07/news041_0.html