東京新聞2022年12月20日 06時00分
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世界最大級の古書店街、東京・神保町で大正時代から営業を続ける「古賀書店」が年内で閉店する。クラシック音楽にまつわる資料を大量にそろえた全国でも珍しい店で、研究者や演奏家、愛好家の間では知られた存在だったが、ネットの普及による逆風が高齢になった店主の決断を促した。惜しむ声が上がる。(清水祐樹、宮尾幹成)

店内には、国内外のクラシックの音楽家の伝記や資料、研究書、楽譜などがびっしり。ジャズやタンゴ、シャンソンなど他ジャンルもあるものの、あくまで主力はクラシックで、他のサブカルチャー系の専門店とは一線を画してきた。

「こぢんまりとした店構えながら、音楽大学の図書館にも匹敵する重厚な空間だった」。30年来、月1度のペースで通い続けてきた会社員西原昌樹さん(50)=東京都杉並区=は、店内の様子をそう形容する。「通りすがりの人から専門家まで、幅広い層の客と店主のやりとりを傍で聞くのも楽しかった」と懐かしむ。

4代目店主の古賀愼志しんじさん(72)によると、創業は大正時代初期。現在地の近くにあった最初の店は1923年の関東大震災で被災、5年後の昭和3年に今の建物に移った。木造3階建ての表面を装飾して石造りのように見せる、いわゆる「看板建築」で重厚な構えは今も街のシンボルだ。

クラシックに興味のあった祖父が関連書を大量に仕入れたのが、音楽専門書店としての性格を強めたきっかけという。古賀さんは「昔は音楽家が亡くなるたびに、関連本がどっと持ち込まれた。うちのおかげでたくさん本が書けたと言ってくれる先生もいた」と振り返る。

趣味で古今のピアノデュオ作品を研究している西原さんも、「楽譜収集家として知られたピアニストが亡くなった後、サイン入りの遺品が数年がかりで店頭に並び、さまざまな貴重な楽譜と出会えたことが一番の思い出」と話す。

ところが、珍しい本がインターネットで買える時代になった。売り上げは減り、後継者のめども立たない。古賀さんは「店をたたむのは体力がいる。元気なうちに」と閉店を決意した。

高校生だった70年代からの常連という医師横山聡さん(67)=東京都新宿区=は、フランスピアノ音楽やピアノ奏法の専門書など、多くの絶版書をここで手に入れてきた。ある楽譜出版社が廃業した時は、「行くたびに店の奥の狭いスペースに座り込んで、手元にないものを発掘していた」。 20年ほど前、かつてはクラシック愛好家必読だった専門誌「音楽芸術」(音楽之友社、98年休刊)を十数年分持ち込んだところ、「今の人はこういうものまであさって深く勉強しないから需要がない。自分で持っていたほうがいい」と買い取りを断られ、時代の変化にショックを受けたことも。

家族には、自分に何かあった時は音楽関連の蔵書の処分を古賀書店に相談するよう告げていた。「これから、どうしたらよいのか…」と途方に暮れる。

現在は閉店セール中。北海道から九州まで、昔の常連客が詰め掛けている。古賀さんは「『楽しませてもらいました』と言ってくれるのがうれしい。自分にとっても楽しい仕事だったので寂しくなりますね」。最終営業日は24日をめどに考えている。

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