石田雅彦 12/31(土) 11:56
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20221231-00331009


赤鼻のトナカイは吸い込んだ冷たい空気を鼻で暖めているようだが(※1)、我々は寒い季節になると鼻が冷える。鼻が冷えるとウイルスの侵入を防ぐ機能が低くなり、感染症にかかりやすくなるようだ。

⬛なぜ寒いと風邪を引くのか

 気温が下がってくると死亡率が上がる。体温が下がると免疫機能も低下し、風邪やインフルエンザなどの感染症のリスクが増えるからで、一部の国や地域では暖房のために大気汚染が悪化するからとも言われている(※2)。

 呼吸のために吸い込んだ空気には、ホコリや病原性微生物などが含まれている。これを含んだ空気は、まず鼻毛によってフィルタリングされた後、嗅覚神経のある鼻粘膜で覆われた鼻腔を経て気管へ流れ込んでいく。ウイルスを含む微生物は、主に鼻腔内の鼻粘膜に生える繊毛によって喉の奥へと運ばれ、消化器官へ飲み込まれる(※3)。

 こうした防御機能をかいくぐった病原性微生物は、鼻の粘膜や喉で繁殖し、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎、喘息などを引き起こす。これらの感染症を引き起こすウイウルは体温より低い温度でより多く繁殖するが(※4)、これは寒い時期に呼吸器感染症が増えることにも関係する(※5)。

⬛細胞外小胞の役割とは

 さらに、寒くなって気温が下がるとウイウスに対する我々の免疫機能も低下するが(※6)、なぜそうなるかの理由の一つが、細胞外小胞(EV、Extracellular Vesicles)と呼ばれる細胞から放出され、免疫応答やシグナル伝達など細胞間や血液など体液内のコミュニケーションをするタンパク質(エクソソーム)の役割だ(※7)。

 この細胞外小胞は、侵入してきたウイルスに対する自然免疫の機能を調整していると考えられ、マイクロRNAやメッセンジャーRNAを介し、あるいは自身がウイルスに付着してウイルスを殺しているようだ。そして、こうした細胞外小胞の免疫機能は、新型コロナウイルスに対しても観察されている(※8)。

 最近、米国などの研究グループが、寒くなって鼻が冷えると細胞外小胞の機能が低下し、感染症にかかりやすくなるという論文を発表した(※9)。
同研究グループは、4人の健康な研究参加者を摂氏23.3度、相対湿度57%の適度な室温環境、摂氏4.4度、相対湿度90%の低温環境にそれぞれ15分間いてもらい、鼻の奥の粘膜を採取して細胞外小胞に対するウイルス対抗機能の変化を調べた。

 その結果、適度な室温の場合には細胞外小胞はかなり優れた抗ウイルス機能を果たしていたが、低温環境では細胞外小胞の生成が40%以上少なくなり、その機能が落ちることを発見したという。同研究グループは、冬に冷たい空気を吸い込めば、細胞外小胞の生成に影響し、ウイルス感染に対する抵抗力が低下するだろうと述べている。

 コロナ禍でマスクを着用する時間が増えた。人工的なマスクの感染防止効果は明らかだが、新型コロナやインフルエンザに対しても鼻を冷やさないマスクに効果があるようだ。


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