「よくなったと思ったら、コロナのウイルスが急激に増えたんです。かなりやっかいな印象です」

こう話すのは、PCR検査に詳しい国立遺伝学研究所の川上浩一教授だ。川上教授は11月15日に37・8度の熱を出し、抗原検査の結果、コロナ陽性だった。
発熱後すぐに熱は下がったが、この日から自身でPCR検査を実施し、自らの感染状況を観察した。冒頭の発言は、自分の日々のPCR検査の結果を見てのものだ。

日本のPCR検査では、Ct値が40未満で陽性としている。Ct値は、ウイルスが多いほど、低い値が出る。

療養1日目(15日)のPCR検査では、18・31と低いCt値(ウイルスが多い値)が出た。
その後、新型コロナウイルスの増殖・拡散を防ぐとされる飲み薬「ラゲブリオ」を服用すると、2日目には31・54までCt値が上昇。3日目には28・76、4日目には33・3とCt値は30前後で推移した。

その後、8日目は36・15、9日目は37・68とCt値が40付近にまで上昇した。しかし、10日目は28・62、11日目は24・2、12日目は28・78と再びCt値が減少した。

ウイルスはこの後、増減を繰り返しながら、減少していったが、最終的にウイルスが検出されなくなったのは、30日目の12月14日だった。


川上教授はこう指摘する。「Ct値30以下では周りの人に感染させるリスクがあると見ています。12日目でもウイルスが多く、政府がコロナ陽性者の療養期間を7日間に短縮したのは失敗だったのではないでしょうか。

抗原検査キットを無料で配布する自治体もありますが、PCRと比較して精度が低く、Ct値25以上の陽性者を見逃すことがよくあり、『陰性』の結果が出たとしても、注意が必要です」


今回のウイルスの増減について、他の専門家はどう見るか。豊橋技術科学大の原田耕治准教授(理論生物学)は「持続的な感染が新型コロナウイルスの特徴」と説明する。

原田准教授らが行った感染シミュレーションによると(グラフ)、新型コロナはウイルスがなくなる完治状態は起こりにくく、体内にウイルスが残り続けるのが一般的だという。
重症化した人は、平均的な症状の人よりもウイルスが残ると見られ、長引くコロナ後遺症はウイルスの持続感染が要因だと見ている。
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