日本銀行は18日、大規模な金融緩和の枠組みを維持することを決めた。日銀は10年続けてきた緩和をさらに続け、賃金上昇などを伴う形での物価上昇を目指すとするが、緩和を主導してきた黒田東彦(はるひこ)総裁の任期満了は4月に迫る。異例の金融政策のほころびも目立ち始める中、市場では、日銀は早晩、さらなる政策修正に踏み切るとの見方が強まっている。

 18日昼、日銀が緩和策を維持したことが伝わると、市場は大きく反応した。

 東京債券市場では日銀が設ける上限を超え、0・51%まで上がっていた長期金利が0・3%台まで急低下。外国為替市場では、米国と日本の金利差が再び広がるとの見方が強まり、円が売られてドルが買われた。発表前から一時3円ほど円安が進み、1ドル=131円台へ下落。円安は輸出企業の業績を改善させることなどから、日経平均株価は一時、前日終値より一時600円以上高い2万6800円台に乗せた。

投資家に疑心暗鬼
 大きく市場が動いたのは、政策修正を見込む予想が多かったことの反動だ。日銀と市場のずれの背景には、日銀に対する投資家の疑心暗鬼がある。

 日銀は昨年12月、金融緩和策の一環として低く抑えていた長期金利の上限を、「0・25%程度」から「0・5%程度」に引き上げると突如、決定。日銀はそれまで、上限の引き上げは「事実上利上げ」と説明していたことから、市場では金利上昇を見込んで国債を売る動きが一気に広がった。国債価格が下がった時に買い戻せば差益を得られることなどから、投機筋の国債売りも出た。

 その結果、日銀が直接操作の対象とする、10年物国債とは別の年限の国債の金利も大きく上昇。日銀が修正の理由とした金利水準の「ゆがみ」が解消されない状態が続いた。国内の資産運用会社、アセットマネジメントOneで債券運用を担当する加藤晴康・ファンドマネジャーは「日銀の金融政策に対する信頼感が非常に低下してしまった。日銀のもくろみが完全に破綻(はたん)してしまった」と話す。

 市場との対話について会見で問われた黒田氏は「何か特別な問題があるとは考えていない。金融政策を、オープンに議論して申し上げている。金融政策当局とマーケットが、全く同じ考えでなくちゃいけないということはない。金融政策決定会合で何を決めるかということを、事前に市場に伝えるということは、どこの中央銀行もやっていない」などと話した。

■市場からは「限界」指摘…(以下有料版で,残り1048文字)

朝日新聞 2023年1月19日 6時00分
https://www.asahi.com/articles/ASR1L6VD1R1LULFA01C.html