あの店も閉店か──。町の中心部で、店の窓が白いペンキで塗られていく。近くの店では、家族連れが毛布を大量に買い込んでいる。フードバンクは大行列だ。パブは閉店時間が早くなり、まるまる休業する日も増えてきた。
ここはイングランド北西部の田舎町ペンリス。寒くて、惨めで、数え切れないほどの問題にがんじがらめになった町だ。2月は例年よりも一段と寒くなると予想されているが、暖房も入れられないなか、人々の暮らしは一体どうなってしまうのか。
ほとんどの店が、週に数えるほどの日しか営業しておらず、営業日も午後4時には閉まってしまう。創業25年の人気パブや、18年前からある食料雑貨店も閉店した。安売り衣料品店さえも、売り上げが半減したため店を畳んだ。
サプライチェーンの問題でスーパーマーケットには、空っぽの棚が目立つ。卵がない。ジャガイモがない。Wi‐Fiも入らない。
筆者はこの1年ロシアの侵攻を受けたウクライナで取材活動をしてきたが、ミサイルが降ってくる危険を別にすれば、ウクライナのほうがペンリスよりもよほど仕事をしやすい環境だった。

ブレグジットで出稼ぎ労働者が激減したことにより、イギリスでは33万もの人手不足が起きている。そのほとんどが運輸業、倉庫業、接客業、小売業の仕事だ。イギリス社会に欠かせないパブもピンチに陥っている。
人手不足に苦しむ店に、燃料費の高騰が追い打ちをかけた。ペンリスにあるメキシコ料理店は昨秋、光熱費が1000%上昇するという見積もりを事業者から受け取った。
過去10年近く国外で仕事をしてきた筆者にとって、母国の衰退ぶりは衝撃的だ。本稿も、カーディガンを重ね着し、毛布にくるまりながら書いている。なにしろ自宅の暖房を数時間入れただけで、10ポンド(約1580円)もするのだ。
物価は高騰しているのに、賃金はほとんど上がらないことに抗議して、鉄道から郵便局、国民保健サービス(NHS)までが代わる代わるストライキをしている。このため救急病棟でさえ、待ち時間が12時間を超えることもある。
交通機関の運賃が大幅に引き上げられたため、ペンリスからバスで40分ほどの大きな町ケズウィックまで買い物に行こうにも、往復24ポンド(約3800円)もかかる。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/eu1000_1.php

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