2/17(金) 7:11配信
時事通信

 中国の偵察用気球とみられる飛行体が相次いで日本上空を飛行していたことが分かり、政府は対領空侵犯措置の武器使用基準を緩和し、気球や無人機を撃墜できる方針を明確化した。

 覇権主義的な動きを強める中国をけん制する狙いがある。ただ、政府内で国家安全保障会議(NSC)や閣議での手続きは踏まず、国会で事前の議論もなかった。実際の運用面でも課題は多い。

 自民、公明両党は16日、防衛省から新方針の説明を受けると即日了承した。反対意見はなかったという。自民党の小野寺五典元防衛相は会合で「沖縄周辺で中国の無人機が公海上で航行している。領空に接近するかも分からない」と危機感を示し、新方針を後押しした。

 ただ、法解釈の重要な変更にもかかわらず、政府・与党内で十分な検討が行われたのかは疑問が残る。今後の国会審議では現行法との整合性に加え、技術面の問題や具体的な基準が論点となりそうだ。

 航空自衛隊トップの井筒俊司空幕長は16日の記者会見で「戦闘機からミサイルを発射するなどの手段で気球の破壊は可能だ」と強調した。だが、自衛隊幹部は「訓練から始める必要がある」と打ち明けた。

 米軍が4日に撃墜した気球は、高度1万8000~2万メートルの上空を飛行。ステルス戦闘機F22が空対空ミサイルを発射した。一方、空自はこのような極めて高い上空を低速で飛ぶ気球を狙った訓練は行っていないという。自衛隊法84条が定める対領空侵犯措置の対象は、有人の戦闘機や爆撃機を想定したものだ。

 日本領空に侵入してきた気球が民間の気象観測用か、他国軍の情報収集用かを見極めるのはかなり難しいとの見方もある。

 防衛省は、気球に対し、実際にどういう状況で武器使用するかの具体的な判断基準は示していない。同省幹部は「個別具体的に判断することになる。いざ、撃墜の措置を取った場合は説明する」と述べるにとどめた。 

ソース https://news.yahoo.co.jp/articles/3aa0ee167ee096c2b2ca071f12e04278264206f4