安倍政権下の2015年に放送法の政治的公平性をめぐる解釈が国会で新たに追加された問題は、総務省が公表した行政文書によって、首相官邸側の強い関与のもとで政府側の答弁が引き出されていたことを浮き彫りにした。水面下で官邸側が進めた国会質疑の段取りなどの「シナリオ」が、政府側の資料で表に出るのは極めて異例だ。

 文書は、TBSの番組「サンデーモーニング」の報道内容が偏っていると考えた当時の礒崎陽輔首相補佐官が14年11月、総務省側に問い合わせたことから始まっている。直前に安倍晋三首相が衆院解散に踏みきったタイミングだった。その後、安倍氏らの了解を取り付けながら、国会の場で高市早苗総務相が新解釈を示すに至った経緯が記録されている。

 15年1月29日付の文書によると、総務省側との打ち合わせの席で礒崎氏は「いつ誰が質問するかは慎重に決めたい。(補佐官は質問に立てないので)質問は補佐官がきちんとコントロールできる議員にさせる」と発言。さらに後日、礒崎氏は「この件は俺と総理が2人で決める話」だと発言し、「官邸の構造論を分かっておくように」とも述べたと記されている。

 安倍氏を交えて具体的な段取りが決まっていったのは3月5日。礒崎氏らの説明に安倍氏は「国会答弁をする場は予算委員会ではなく総務委員会とし、総務大臣から答弁してもらえばいいのではないか」と発言したという。

 これを受け、礒崎氏はさらに…(以下有料版で、残り851文字)

朝日新聞 2023/3/8 21:00
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