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2023年3月28日(火) 19:07
各地で桜の満開を迎えるなど春本番となってきましたが、実は今、米子水鳥公園(鳥取県・米子市)に1羽のコハクチョウの姿があります。日本での越冬を終え、すでにシベリアへ帰ったはずのコハクチョウですが…。

季節外れのコハクチョウが鳥取にいるのには、切ない理由がありました。

23日、米子水鳥公園で目撃されたのが…

小崎純佳キャスター

「望遠鏡をのぞいてみると、コハクチョウが1羽ポツンといるのが確認できます」

山陰で越冬したコハクチョウは、春の訪れとともに皆、シベリアへ帰って行ったはずですが…

このコハクチョウはなぜ、まだ鳥取に残っているのでしょうか?

米子水鳥公園 桐原 統括指導員

「コハクチョウの渡りが終わったあとに、すかさずやってくる別のコハクチョウがおりまして、水鳥公園の関係者が「吉田さん」と呼んで親しんでいる鳥です」

このコハクチョウ。関係者の間では「吉田さん」と名付けられ、親しまれていると言います。

「吉田さん」と名付けられた理由が…

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米子水鳥公園 桐原 統括指導員

「2011年に島根県安来市で、ケガをして飛べなくなったコハクチョウが吉田川に残っているというブログ記事を見つけて、発見された吉田川にちなんで、吉田さんと呼んでいます。左の翼のところを骨折したようで、骨折した状態で、変な形で骨がくっついてしまったので、傷は癒えているようですが、正常に羽ばたけません」

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コハクチョウの「吉田さん」は、10年以上前、越冬のため日本にやってきましたが、滞在中に左の翼にケガを負い、飛ぶことができなくなり、故郷シベリアへ帰ることができなくなってしまったのです。

「吉田さん」は普段、島根県安来市内の水辺で過ごしているそうですが、なぜか毎年3月下旬ごろになると、泳ぎと徒歩で県境を越え、鳥取県米子市の米子水鳥公園へやって来るのだといいます。

米子水鳥公園 桐原 統括指導員

「中海を泳いで水鳥公園までやって来まして、水鳥公園を囲む堤防を乗り越えて、葦原をかき分けて、水鳥公園の池の中に入ってきて、ひと月半ほど過ごすというのがいつもの流れになっています」

なぜ春に合わせて、わざわざ危険を冒してやって来るのか。桐原指導員はこう推測します。

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米子水鳥公園 桐原 統括指導員

「コハクチョウの生態を考えてみますと、渡り鳥ということで、春になると仲間はロシアへ向けて旅立っていきます。なので、この個体にとっては、安来から水鳥公園に移動するのも北帰行といいますか、渡りのつもりなのかなと個人的に思っています。それで水鳥公園で少し過ごした後で、安来の方に帰っていくと、渡り鳥としての本能が満たされて、落ち着くのではないかと想像しています」

周りの仲間たちが故郷へ帰っていく中、飛べなくなった「吉田さん」は毎年取り残されます。「吉田さん」にとっては、この泳ぎと徒歩の移動が「北帰行」なのかもしれません。

米子水鳥公園 桐原 統括指導員

「結構長生きしている個体で、年を取っていると思いますが、これからいつまで元気な姿を見せてくれるのか、注目しながら見守っていきたいと思います」

「吉田さん」は例年1か月ほど米子市に滞在して、また徒歩と泳ぎで安来市の方へ戻っていくのだそう。

米子水鳥公園ではもうしばらく「吉田さん」の姿を見ることができるかもしれません。