日本損害保険協会は昨年12月、交通事故被害者や家族の心情を解説した36ページの冊子をまとめ、会員企業に配布した。きっかけとなったのは、保険金の支払いをめぐり、損保会社側の心ない対応で傷ついた交通事故遺族の訴えだった。被害者の心をえぐる「2次被害」の実態を取材した。

遺族追い詰める「ひどい言葉」
 「高次脳機能障害って、頭がクルクルパーなだけでしょ? それは障害ではない。賠償も認められない」。交通事故で義理の両親を亡くし、義弟妹も大けがをした小沢樹里さん(42)は、損保担当者の一言に耳を疑った。

 事故が起きたのは2008年。埼玉県内で義理の弟が運転する車に飲酒運転の暴走車が衝突。同乗していた義両親が亡くなり、義弟と義妹も大けがをした。

 義妹は顔面を複雑骨折したうえ頭も強打し、仕事も辞めざるを得なかった。小沢さんが妹とともに加害者が加入する損保会社の担当者と面会した際に浴びせられたのが冒頭の言葉だ。「妹は記憶や意識がなくなるほどの障害を負わされた。あまりにひどい言葉に大泣きして家に帰りました」

 小沢さんは12年、関東交通犯罪遺族の会(あいの会)を設立して代表理事に就任。交通事故の被害者支援を続けている。あいの会には損保会社との賠償交渉をめぐる2次被害の相談が年間、数十件のペースで寄せられているという。被害者や遺族がいかに2次被害に苦しんでいるかが分かる。

池袋暴走事故遺族も民事裁判で2次被害
 あいの会には、19年に起きた池袋暴走事故で妻子を亡くした松永拓也さんも所属している。松永さんは事故原因を究明するため、刑事裁判と並行して20年10月、加害者を相手取り損害賠償を求める民事訴訟を起こした。ここでも2次被害は起きた。

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毎日新聞 2023/3/31 05:00(最終更新 3/31 05:00) 有料記事 2742文字
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