沖縄県の宮古島付近で10人が搭乗した陸上自衛隊ヘリコプターが6日に行方不明となった事故で、不明機が空港管制と複数回の無線交信をしていたことが、関係者への取材で判明した。下地島へ接近していることに関するやり取りをした2分後にレーダーから機影が消えたという。ヘリからの救難信号発信や緊急の通報も確認されておらず、防衛省は突発的な異変が起きたとの見方を強めている。

 消息を絶ってから2日が経過したが、8日夕の時点で10人の安否は分かっていない。8日は自衛隊だけで航空機6機、艦艇3隻、陸自隊員約270人が捜索に当たった。機体の一部は海中に沈んだ可能性があるとみて、掃海艇も投入され、海中の物体を音波で探知するソナーを使って調べた。海上保安庁の巡視船なども捜索に参加している。

 防衛省や国土交通省関係者によると、ヘリは6日午後3時46分に航空自衛隊宮古島分屯基地を離陸した。まずは宮古島の空港管制と無線で交信し、海岸線を北上するように飛行した。その後は計画通りに南西へ進路を変えたが、56分に伊良部島の北方海域上空でレーダーから消えた。

 行方不明となる2分前には、伊良部島西側の下地島にある空港管制と無線で交信していた。その際、不明機の乗員は管制官と言葉を交わし、島の北側から下地島方面に接近していることを互いに確認したという。異常を知らせる内容ではなかった。

 また不明機は、機体が強い衝撃を受けたり海水につかったりした場合に自動で救難信号を発信して位置を知らせる装置を搭載していたが、周辺で受信した空港管制や船舶はなかった。異変が起きた際にレーダー上で瞬時に知らせる機能も備わっていたが、この機能を使った形跡もなかったという。

 不明機には、飛行速度や高度などのデータを記録した「フライトレコーダー」も積まれていた。現場周辺の海域では機体の一部とみられる破片が見つかっているが、フライトレコーダーは8日夕の時点で回収されていない。陸自は6日に調査委員会を設置しており、破片を回収して原因を調べる方針だ。

 不明機には、第8師団(熊本市、約5000人)のトップである坂本雄一師団長(55)や師団幕僚長、宮古警備隊長ら幹部が搭乗していた。3月下旬に就任したばかりの師団長らに対し、宮古島の地形に詳しい宮古警備隊長らが状況を説明していたとみられる。【内橋寿明、木下翔太郎、渡辺暢】

毎日新聞 2023/4/8 19:36(最終更新 4/8 19:37) 983文字
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