「個性的」とは否定の言葉?
 「個性的と言われると、自分を否定された気がする」「周囲と違うってことでしょ? どう考えてもマイナスの言葉」「他の言葉は良い意味にも取れるけど、個性的だけは良い意味に取れない」「差別的に受け取られるかも」……。

 どうやらいまの若者たちは「個性的」だと思われたくないらしい。

 〈思いをストレートに口に出すと、周囲から自分だけが浮いてしまう。みんなと同じでなければ安心できず、たとえプラスの方向であったとしても自分だけが目立つことは避けたい。近年はそんな心性が広がっているように見受けられる。

 (中略)

 「個性的であること」は、組織からの解放を求めるには好都合だが、組織への包摂を求めるには不都合である。自分の安定した居場所が揺らぎかねないからである。

 今日の若者たちは、かつてのように社会組織によって強制された鬱陶しい人間関係から解放されることを願うのではなく、その拘束力が緩んで流動性が増したがゆえに不安定化した人間関係へ安全に包摂されることを願っている〉(「いまの若者たちにとって「個性的」とは否定の言葉である」『日本の死角』より)

 コミュニケーションや人間関係が固定的から流動的になるにつれて、若者は場面場面で付き合う相手を切り替えている。

 これは上の世代からはなかなか見えてこない実態だろう。

なぜ結婚しないのか?

 若者については、結婚しなくなっていることも興味深い現象だろう。

 一体なぜなのか? 
 〈少子化対策を熱心に言挙げする人々は、しばしば仕事と子育ての両立難や、若年男性の経済的困窮をとりあげて、「若者は結婚したくても、できない」というリアリティを強調してきた。

 しかし、それは事態の半面でしかない。

 今回は別の角度から、若者が結婚しにくくなっている理由を考えたい。

 それは格差婚、すなわち女性が自分よりも学歴や収入など社会的地位の低い男性と結婚する傾向が少ないままだから、ではなかろうか〉(「家族はコスパが悪すぎる? 結婚しない若者たち、結婚教の信者たち」『日本の死角』より)

 『日本の死角』で紹介される調査では実際に日本の下降婚率が低いことも示される。

 いまや出生数80万人割れ、2070年に総人口が8700万という推計も出たばかり。あらためて、山積する日本の論点を整理し、考える機会としたい。

現代新書編集部
https://gendai.media/articles/-/109640
2023.04.27