東日本大震災で被災した住民が暮らす宮城県沿岸部の災害公営住宅で、部屋の合鍵を自治体が管理するかどうかで対応が分かれている。1人暮らしなどで異常があった際、合鍵があれば迅速に安否確認できる可能性がある一方、家族以外の合鍵所持に抵抗を抱く世帯もあるとみられる。住民の高齢化で単身世帯が増える中、実情に沿った対応が求められる。
(気仙沼総局南三陸分室・高橋一樹)


 県沿岸部の被災15市町に河北新報社が取材した合鍵管理の状況は表の通り。
https://kahoku.news/articles/20230429khn000016.html?format=slide&page=3

 全戸分所持していると答えたのは石巻市、女川町など2市4町。いずれも通常の市町営住宅、災害公営にかかわらず建設当初から持っており、使用する際は警察や消防が立ち会うなどして管理、運用している。

 女川町は「1人暮らしの高齢者が増えている。合鍵を持っている方が住民にとって安心ではないか」と説明。多賀城市は「市営住宅なので合鍵を管理しており、警察の要請があった場合のみ使う」、松島町は「役場の警備員が常時管理し、入居者に渡す場合も本人確認した上で職員が部屋まで同行する」と明かす。

 逆に合鍵を持たないのは仙台市、東松島市など6市2町。東松島市は「自宅と関係ない場所で鍵を持っている方が、かえって住民に不安を与える」という考え。気仙沼市は「入居の際に合鍵を複数渡し、親戚や近くの信頼できる人に渡すようお願いしている」、七ケ浜町は「最悪の場合は消防が窓ガラスを割って入るので必要ない」とする。

 仙台市は警備会社に事業委託し、緊急通報を受けて駆け付けた警備員が鍵を開ける民間サービスを導入している。主に65歳以上の1人暮らし世帯の希望者に警備会社の見守り機器を月額利用料535円で貸し出す。塩釜市も機器の導入費用などを助成している。

 合鍵を一部所持していると答えたのは山元町。災害公営住宅完成時に全戸分の合鍵を預かったが、退去して別の住民が入る際には作っていないという。「合鍵を持っていても警察などが立ち会わないと役場だけでは使えない。町の直営から県住宅供給公社に管理委託が移行したこともあってやめた」と話した。

 南三陸町は合鍵を所持していないが、町社会福祉協議会や多くの自治会に要望され、今後は持つ方向で制度設計を進めている。

河北新報 2023年4月30日 6:00
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