マイナンバーカードの相次ぐトラブルで、カードを返納する人が増えています。返納者に不都合なことはあるのでしょうか。(山口登史)

 Q 返納すれば、個人情報が流出する恐れはなくなりますか。
 A なくなりません。12桁のマイナンバー(個人番号)とひも付いた健康保険証や年金などの情報はシステム上に残ったままなので、何らかのトラブルで流出するリスクは消えません。変わることがある公金受取口座を除き、原則として希望してもひも付けを解除することもできません。デジタル庁の担当者は「ひも付けを解除することで利便性が失われるため、その必要はない」と説明しています。
 Q 返納で不便になることは。
 A 住民票の写しをコンビニで取得するなど一部の行政サービスが受けられなくなります。カードは顔写真入りの身分証明書として使えますが、それもできなくなります。また、健康保険証とカードを一体化する「マイナ保険証」がないと、医療費の窓口負担が重くなります。
 カードを再発行するには1000円かかります。国がカードの普及のために実施した「マイナポイント」は、返す必要はありません。
 Q そもそもカードの取得は義務ですか。
 A いえ、あくまで任意です。ただし、政府は2024年秋に健康保険証を廃止して、マイナ保険証に一本化することを決めています。取得を事実上、義務化するもので、政府の強硬なやり方には反発があります。
 返納した人は「トラブル続きで政府を信用できない」「個人情報の流出が怖い」といった理由を挙げています。信頼を回復するためには拙速な普及をやめ、制度自体を一から見直す必要があります。

東京新聞 2023年7月5日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/260939