毎日新聞 2023/8/9 13:03(最終更新 8/10 03:50)

こども家庭庁が少子化対策の一環として実施している「家族の日」にちなんだ写真コンクールに対し、自民党議員が「家族のあり方を評価すること自体が疑問」と苦言を呈した。
SNS(ネット交流サービス)でも「家族から捨てられた子供は、どんな写真を送ればいいのか」などの批判が相次いでいる。

◼どんなコンクール?

「こどもまんなか『家族の日』写真コンクール」で、11月第3日曜日の「家族の日」に合わせて、2007年から内閣府で実施されており、23年度からこども家庭庁に引き継がれた。

今年は8月1日から9月4日まで、子どもが主役の「こどもまんなか」▽家族だんらんの様子などの「あったかファミリー」
▽地域と子どもらの触れ合いなどを捉えた「いきいき地域」――の3部門で、作品を募集。
フォトグラファーら3人の審査により、部門ごとに最優秀賞と優秀賞を選ぶとしている。

◼�SNSには批判的な意見も

こども家庭庁が作品の募集を告知すると、SNSでは
「家族から捨てられた子供は、どんな写真を送ればいいのか」「こんなことで人口減少が止まるわけがない」「そんなことに税金を使わないで」などの意見が相次いだ。

自民党の山田太郎参院議員は8日、自身のX(ツイッター)で、こども家庭庁の職員に「苦言」を呈したことを明らかにし、
「同庁の第一義的責任は、児童養護、虐待、シングルペアレント、ヤングケアラー等に対応し困難を抱える子や家庭をサポートすること。
同庁が家族のあり方をコンクールで評価すること自体疑問」と投稿した。

日本維新の会の足立康史衆院議員は
「家族も大事だけど、それだけでは立ち行かない子どもたちに希望を与える仕事をしなくちゃ。『こどもまんなか』の意味は、そういう意味だと皆んな思ってるんだから」

立憲民主党の小沢一郎衆院議員も
「もういい加減にしたほうがよい」などとし、コンクールに批判的な意見を発信している。

◼�アれを受けこども家庭庁は…

こども家庭庁少子化対策室の中原茂仁室長は、困難を抱える子どもの支援を大前提とした上で、
「コンクールで一定の家族観を押しつける意図はない。家族や地域の絆が大切という『家族の日』の趣旨を踏まえ、心温まる日常の風景をみなさんと共有したいという思いから実施している」と説明。

今後の事業の進め方については「いろいろなご指摘を踏まえて、発信や表彰の仕方を工夫するなど改善していきたい」としている。

日本大の末冨芳(すえとみ・かおり)教授(教育行政学)は「家族の幸せばかりを強調すると、家族が居場所ではない当事者を苦しめてしまう恐れがある」と指摘する。

こども家庭庁の創設と同時に施行された「こども基本法」は、子どもの最善の利益を守ることを掲げている。末冨教授は「法の趣旨に立ち返り、写真コンクールについて根本から問い直した方がいい」と話した。
【デジタル報道グループ】

https://mainichi.jp/articles/20230809/k00/00m/040/117000c