繁殖期のモグラは一夫一妻か一夫多妻? 山形大理学部4年の山沢泰さん(22)と福島大共生システム理工学類の高木俊人特任助教(分子生態学)らのグループが、謎とされるモグラの繁殖生態に関する研究成果を発表した。アズマモグラの親子をDNA解析し、暗い地下での営みに光を当てた。

DNA解析「今回は多夫一妻ではない」
 アズマモグラは東日本を中心に生息し、春から初夏に繁殖期を迎える。地面の下の観察や個体の長期飼育は難しく、雄と雌の「婚姻形態」といった特性は、よく分かっていない。

 山沢さんは山形県の許可を得て2021年8月、山形市内で妊娠中のアズマモグラを捕獲。生まれた子モグラ3匹はすぐに死んでしまったが、親子のDNAを調べた結果、父親の遺伝子型をほぼ1種類に絞り込むことができ「今回は多夫一妻ではなかった」と結論付けた。

 用いたDNA解析の手法は先行研究で19年に開発され、モグラ類の親子判定や個体識別に利用できることを世界で初めて実証した。今後は多くの個体を分析することで(1)一夫一妻か、一夫多妻か(2)ある地域での血縁関係とその分布-などの解明が期待できるという。

きっかけは「モグラ博士」
 中学生時代に「モグラ博士」と呼ばれる動物学者の著書を読み、モグラ研究を志した山沢さんは「謎が多く、かわいくもあり興味が尽きない動物。今回の成果を土台に研究を進めたい」と語る。高木特任助教は「動物園でのモグラ類の繁殖や管理にも貢献できる知見が得られた」と説明する。

 論文は日本哺乳類学会の機関誌に掲載され、インターネット上で自由に閲覧できるオープンアクセス方式で公開されている。

河北新報 2023年8月18日 6:00
https://kahoku.news/articles/20230817khn000031.html