政府は脱炭素分野に対する企業の国内投資を加速させるため、法律で認定を受けた企業が、複数年にわたって税制上の優遇措置を受けられる新たな枠組みを設ける検討に入った。欧米では政府が巨額の財政措置を講じて、電気自動車(EV)に使う蓄電池などの生産設備の企業誘致策を打ち出しており、日本も新たな枠組みで対抗する。

 来年の通常国会で産業競争力強化法を改正することを目指し、経済産業省が対象や制度の詳細を詰める。

 現行の同法は省電力化につながるパワー半導体▽EVなどに使う蓄電池▽洋上風力発電の部品の生産設備――などに投資した場合に、その初期投資額について法人税を最大10%税額控除するなどの優遇措置を設けている。ただ、生産活動が軌道に乗るまでには時間を要することも多く、経済界からは長期にわたる支援で投資回収の見込みをたてやすくしてほしいとの要望が根強かった。

 現行の措置が2023年度末で期限切れとなることから、新たな支援枠組みでは、法人税の優遇対象を初期投資分だけでなく生産活動後にかかる費用にも拡充し、適用期間を大幅に延ばすことなどを盛り込む方向で検討する。支援対象も太陽光発電や水素・アンモニアなどの新エネルギーへの投資などに広がる可能性がある。

 米国では昨年8月に成立したインフレ抑制法で、脱炭素関連に10年間で3690億ドル(50兆円)を投じて国内産業のテコ入れを図ることを決めた。その一環として、生産設備の拡充などをした場合、投資後の生産活動に応じて適用される税制優遇を導入した。経産省は米国の新法も参考にして制度設計を急ぐ。

 一方で米国の税制優遇措置は、米国内での原料調達を求めるなど要件が厳しく、国内産業保護策の色合いが濃いとの批判もある。経産省は海外企業を認めるなど幅広く国内投資を後押しする考えだ。

各国で企業投資の獲得競争加速
 政府が産業競争力強化法を改正し、国内投資を後押しするための新たな税制優遇措置を検討するのは、…(以下有料版で,残り1838文字)

毎日新聞 2023/8/18 06:00(最終更新 8/18 06:00) 有料記事 2654文字
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