海水浴を知らずに育つ子も「体験格差」悲痛な実態 「学校外の体験=遊び」と思われ、支援進まず
2023/08/25 18:00 東洋経済
https://toyokeizai.net/articles/-/696735


海水浴にキャンプ、遊園地、家族旅行――幼いころの夏の想い出を聞かれたら、これらを思い浮かべる人は多いのではないか。「体験」を通して得られる経験が子どもの学力などにも影響するという研究もあり、近年は体験の重要性が注目を集めている。

ところが、親の年収が高いほど子どもの体験にお金をかけることができる一方で、親の年収が低い家庭では学校外での体験をまったくしていない子も多く、それが子どもの成長にも影響を及ぼす「体験格差」を生んでいる。その実態を取材した。

大学生になるまで「海水浴」を知らなかった

小学校高学年の時に両親が離婚し、母子家庭で育った源さん(仮名、30代)は、海は海水浴を楽しむところ、というのを大学生になってから知った。友人に、「夏と言えば海!海に行こう!」と言われたが、「海に行って何をするかわからなかった」と明かす。

夏のレジャーを体験したことがない源さんにとって海=海水浴ということが結びつかなかった。「みんなが幼いころに当たり前に経験してきたことが、できていないということに大学生になってやっと気がついた」と言う。

母は家計を支えるため、夜勤もある福祉系の仕事に就いていた。忙しかった母親と過ごした記憶はほとんどない。「自分がやりたいことを言うことは、ワガママなんだと思っていた」と自らを抑えつけて生きてきた。

家族旅行もしたことがない。源さんにとって修学旅行が唯一の旅行経験だった。長期休みを利用して海外旅行をする家庭を見て「うらやましい」という感情にはならなかった。海水浴やキャンプ、旅行へ行く同級生をよそに、源さんにとって小学生の夏休みは学校のプール開放や学童がすべてだった。

中学・高校時代は「我慢し続けて勉強を頑張った」。貧困生活を抜け出すためには、「いい仕事につかないといけない、勉強を頑張るといい仕事につける、いい大学に行くしかない」と考え、努力を続けた。

国公立大に進学し働き始めたものの、幼少期のつらい経験を思い出し苦しくなることがあるという。休職しカウンセリングにかかることもあった。中学・高校時代を振り返り、「あのころが悔しい。もっと豊かに過ごせていたら精神的にも楽だった。子ども時代は人間形成に影響を及ぼすと思う」と語った。


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