読売新聞 9/10(日) 20:56

泥が流れ込んだ牛舎。牛も泥まみれになっていた(9日午前10時20分、鴨川市浜荻で)
 8日の大雨で、観測史上最大の降水量を記録した千葉県鴨川市。記者は9日、同市浜荻地区に入った。袋倉川から水があふれ、流域の住宅や事業所が浸水したという。機械や家畜などの被害は大きく、「廃業するしかない」と肩を落とす酪農家もいた。(河津真行)

 鴨川市では8日の24時間降水量が352・5ミリに達し、観測史上1位を更新した。地区内の道路には9日朝、大量の泥が積もっていた。車では進めない。歩き出したが、踏み込むたびに数十センチの深さまで足が沈み込んだ。

 道路は崖に面している。電柱と崖の間には、大きな牛が引っかかっていた。地区の牛舎から流されてきたといい、濁流のすさまじさを感じた。

事業所内に流れ込んだ土砂を片付ける従業員ら(9日午前11時4分、鴨川市浜荻で)
 「川からすごい勢いで水が来た。流されたらおしまいだと思って、必死に柱につかまった」。酪農家(62)は牛舎で作業中、袋倉川からの濁流に襲われた。20~30分ほど柱にしがみつき、水が引くのを待ったという。

 牛舎は浸水し、濁流にのまれた10頭ほどの乳牛が死んだ。トラックや発電機、空調設備などは全て壊れた。井戸も使えなくなり、生き残った牛に水や餌を与えることもできなくなった。

 機械類の復旧には数千万円がかかる。牛舎の中は泥にまみれ、死んだ牛もそのままだ。道路が復旧しないことには、葬ることもできない。

 「餌代や燃料代が値上がりする中、やめようかとも話しながら必死にやってきた。こんなことになったら、やめるしかない」。酪農家はため息をついた。

 水産加工・販売業の金谷商店では、冷凍庫にまで川の濁った水が浸入した。倒木による停電が起き、販売用にフリーザーに入れていた本マグロやキンメダイの切り身、うなぎといった商品は全て売れなくなった。被害額は、商品だけで1000万円以上だ。

 袋倉川は倒木や土砂によって、せき止められたままだ。関係者(44)は「いつまた、台風が来るかわからない。撤去してくれないと、もっと大きな被害になりかねない」と話した。

 「2019年の台風でも川の水があふれたので、改善するよう行政に要望していたが、何も変わらなかった」。廃棄物処理業の男性(81)は憤る。

 男性は事務所で作業をしていたが、1階が浸水したため2階に逃げた。水かさは一時、2メートルほどの高さになり、最終的に消防のボートで救助された。

 フォークリフトや電気設備などは全て浸水した。被害額は1億円前後になる見込みで、営業再開に1か月はかかるという。「35年ここで営業してきたが、こんなことは初めてだ。一刻も早く浸水対策をしてほしい」と語気を強めた。

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