サカイの出来高払い賃金認めず 「自助努力反映されていない」―地裁支部判決、運輸業界に波紋

 作業量などに応じた「出来高払い制」を中心としたサカイ引越センター(堺市)の賃金制度の妥当性が争われた訴訟で、東京地裁立川支部が8月、「同社の制度は出来高払いに該当しない」として未払い残業代などの支払いを同社に命じた判決が波紋を広げている。運輸業界で出来高払い制は広く取り入れられており、サカイは即刻控訴。業界各社は高裁での審理に注目している。
 労働基準法などの規定では、出来高払い制賃金は残業代を計算する際の割増率が低く、月給制と比べて残業代は少なくなる。サカイの賃金体系は基本給が月6万〜7万円程度と低く、大部分は「業績給」などと呼ばれる同制度扱いの手当となっていた。
 訴えを起こしたのは引っ越し作業員兼ドライバーだった元同社社員の男性3人。業績給を出来高払い制賃金とするのは違法で、本来未払いの残業代があるとして計約1200万円の支払いを求めていた。
 前田英子裁判長は8月9日の判決で、出来高払い制賃金について、「作業量などの成果に応じて一定比率で定められるもの」と定義。同社の業績給の一部は、売り上げが営業担当者と顧客の交渉で既に決まっており、作業員は会社から指示された作業をしているだけだと指摘し、「(作業員の)自助努力が反映される賃金とは言い難い」として当てはまらないと判断した。
 その上で、作業服への着替え時間なども労働時間に認定し、未払い残業代計約950万円の支払いを命令。制裁的な意味合いがある付加金約620万円の支払いも命じた。
 原告側の小林克信弁護士は「判決を受け止めて、労働条件を自主的に改善してほしい」と同社に要望。同様の問題は他社にもあり、「制度的な改善を求めたい」と話した。
 サカイ引越センターは取材に、判決翌日に控訴したことを明らかにした上で「詳細な回答は差し控えたい」とコメントした。

時事通信 2023年09月11日13時31分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023091100100&g=soc