■新千歳空港から500メートルの土地を中国系経営者が取得

 問題の土地は、航空自衛隊の千歳基地に隣接し、自衛隊が管制を一体的に担う新千歳空港から東に500メートルほどに位置している。不動産登記簿によれば、当該土地の住所は苫小牧市。約7.9ヘクタールの「原野」で、2014年1月、香港に住所を置く中国系の経営者T氏が購入していた。この土地売買を巡っては、同年6月、千歳市議会でも自民党議員から「中国資本が取得したのでは?」との質問が出るなど、問題視されていた経緯がある。

 T氏はどんな人物なのか。香港の法人登記簿などを精査したところ、彼の叔父は中国やマレーシアを拠点に巨大木材企業「R」を経営する人物であることが判明。米「フォーブス」誌による世界の大富豪ランキングに登場したこともあるほどだ。一方、T氏自身もRの関連企業で役員を務め、日本では香港のクラフトビールを販売・店舗展開する企業などを経営している。

 T氏にこの土地を売却した男性に話を聞いた。

「Tは私の娘と結婚しました。好青年です。香港のシャングリラホテルで盛大な式を挙げてくれました。叔父の自家用ジェット機で新千歳空港に乗り付けることもあります」

――あの土地は?

「空港の拡幅で価値が上がることを見込んで2000万円で買いました。その後、資金繰りのために、Tに500万円で売った。Tは中国共産党との繋がりはないと思いますが……」

■T氏「あなたと話をする時間はありません。直ちに帰って下さい」

 T氏本人も直撃した。

――Tさんですか?

「イエス」

――新千歳空港近くに土地を所有している件で。

「あなたと話をする時間はありません。直ちに帰って下さい」

――あなたはRグループの一員?

「ザッツ・コレクト(その通り)。お帰り下さい」

■「中国政府の統制下での買収の疑いも否定できない」

『サイレント国土買収』(角川新書)の著者で、姫路大特任教授の平野秀樹氏が指摘する。

「わかっている買収事例は、氷山の一角です。行政の統計からは窺えませんが、中国資本であることを隠すかのように、カムフラージュされた子会社による土地買収も少なくない。さらに純粋な経済活動とは到底言えない、用途が不透明なケースも目立ちます。資産隠しや脱税、中国政府の統制下での買収の疑いも否定できません。基地の近くなど安全保障上の要衝地であれば、懸念は尚更でしょう。中国の場合、有事になると、国防動員法が発動されます。当該の土地が政府に徴収され、戦略拠点になる危険性も拭えない。日本でも、重要土地利用規制法に基づく調査などを加速させていく必要があります」

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