三浦守裁判官の意見
抜粋
外観要件がなければ、「心は女」といって女湯に入ってくるという指摘もあるが、外観要件は、医師が診断した性同一性障害のひとが性別変更するための規定なのだから、この規定がなくても女湯には入れない。
不正があれば対処すればよく、そのことは性同一性障害のひとの権利を制約する「合理的関連性」にはならない。

またトイレや更衣室の利用にかんしても、トイレは他人の性器などは見ないのであるし、性器にもとづいて(男女が)区別されているわけではないので、外観要件は関係ない。安全にトイレを使うことは生活していくうえで不可欠で、それは性同一性障害のひとも同じである。
トイレの使用によって、外観要件を維持する合理的な理由はない。

外観要件は、憲法13条違反である。

草野耕一裁判官の意見
抜粋
第一に性同一性障害の人の数は少なく、手術をしている人も多く、手術をしていない人は少ないうえに、女性たちが男性器を見たくないと知っているのに、あえて女湯に入場し、男性器を見せるような行動をするひとはもっと少なく、存在するとしても、「ごく少数」にすぎないだろう。
だから、女性が意に反して男性器を見せられる「可能性はそもそも極めて低い」。

第二に施設を業者が管理していることだ。
①厚労省は男女は身体的特徴によってわけるべきといっている、
②手術していないひとの入浴を禁止するか、許容するか(日時や曜日を限るなど)、
あるいは中間的措置(無料か有料かでの水着を着てもらう)などのルールを定める必要があるだろう。

したがって外観要件が「違憲」である社会のほうが、「合憲」である社会よりも「善い社会」であるといえる。

宇賀克也裁判官の意見
抜粋
「他方において、5号規定(外観要件)を廃止した場合に社会に生じ得る問題は、もとより慎重に考慮すべきであるが、三浦裁判官、草野裁判官の各反対意見に示されているとおり、上記のような過酷な選択を正当化するほどのものとまではいえないように思われる。
したがって、私は、5号規定も、本件規定と同様に違憲であるとする点で、三浦裁判官、章野裁判官の各反対意見に同調する」。