欧州の経済大国ドイツの憂鬱 マイナス成長の背後にある二つの理由

 今年、主要国の中で唯一、マイナス成長が見込まれている国がある。長期低迷にあえぐ日本でも、不動産不況に見舞われている中国でもない。それは、欧州の大国ドイツだ。ドイツといえば、世界4位の経済規模を誇り欧州経済のけん引役だったはず。そんなドイツの経済はなぜ、苦境に陥っているのか。

欧州経済の「ブレーキ役」
 「我々はもはや欧州のエンジンではなく、ブレーキ役なのだ」。ドイツ商工会議所連合会のペーター・アドリアン会長は8月、独政府の経済対策の発表に先立ち、独DPA通信の取材にそう話した。

 ドイツの2023年4〜6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、前期比0・0%。23年1〜3月期までの2期連続のマイナスからは持ち直したものの、低迷が続いている。エネルギー価格高騰による物価高(インフレ)で個人消費が低迷したことなどが、直接の要因だ。

 エネルギー価格の上昇は他の主要国も同じだが、ドイツは際立っている。

 米グローバル・ペトロール・プライシズによると、今年3月のドイツの産業用の電気料金はフランスや日本の約2倍、カナダの4倍以上となった。高い電気料金は商品やサービスのコストに跳ね返り、家計を圧迫している。

 なぜ、ドイツのエネルギー価格は他国に比べて高いのか。

 背景には、ドイツ政府のエネルギー政策がある。ドイツは脱原発と再生可能エネルギーへの転換を進めており、再エネ移行の過渡期のエネルギーとして天然ガスを柱に据えてきた。その調達先はロシアで、天然ガス輸入の55%を安価なロシアからのパイプラインに頼っていた。

 だが、ウクライナ戦争で状況が一変。ロシアからの輸入を停止し米や中東などからの液化天然ガス(LNG)に切り替えたが、世界的な争奪戦でLNGの価格は高騰し電気料金が跳ね上がった。

 高い電気料金に企業は音を上げ始めている。独商工会議所連合会が今年9月に発表したエネルギー転換に関する年次報告書によると、独企業の52%がエネルギー転換は競争力に逆風になると回答。生産拠点の海外移転などを検討していると回答した企業も32%と前年から倍増…(以下有料版で,残り1284文字)

毎日新聞 2023/10/27 07:00(最終更新 10/27 07:09) 有料記事 2177文字
https://mainichi.jp/articles/20231025/k00/00m/020/407000c
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