神奈川県鎌倉市内で今年度、特定外来生物「タイワンリス」の捕獲数が、11月末時点で年間捕獲数が過去最多だった5年前に迫る勢いとなっている。あまりの多さに、市は駆除のための関連補正予算案を急きょ提案する。餌を与えると個体がさらに増える可能性があり、市は観光客らに注意を呼び掛けている。

タイワンリスは台湾などに生息している。ペットとして輸入された後、野生化し県内では多くが三浦半島に生息。体長は30〜50センチで背中は黒と黄土色が混ざり、腹部は灰褐色や赤褐色。愛くるしい姿を見せるが、生態系の破壊や農作物への被害が指摘され、外来生物法で輸入、飼育、譲渡などが禁止され駆除対象になっている。

鎌倉市では、捕獲がスタートした2000年度に69匹だったが、徐々に増加して18年度は1571匹と過去最多に。その後は年間1000匹前後で推移していたが、今年度は11月末時点で1553匹(速報値)となった。三浦半島の近隣自治体では大きな変化が見られない一方、鎌倉市では担当者が「異常」と言うほどのハイペース。市は被害の発生事例を記したポスターを各地の掲示板に張り出している。

捕獲数が増えた理由について、市環境保全課の担当者は「今夏の猛暑によりリスの餌となる山の実が採れなくなって鎌倉の市街地に現れるようになったのかもしれない。ただ近隣自治体では、鎌倉のような状況になっていないので何とも言えない」と困惑気味に話す。

市内では市民の庭の果実が食い荒らされたり、戸袋や電線がかじられたりする被害が出ており、市は約200台の檻(おり)を市民に無料で貸し出してリスを捕獲。これを委託業者が1匹当たり6270円で殺処分している。

捕獲数の急激な増加によって委託料が不足する恐れが出ているため、市は6日開会の市議会定例会に700万円を増額する関連補正予算案を提案する。可決されれば過去最高の1860万円となる。

観光スポットの神社や寺などでは、木々の間を走り抜けるリスが人気者になっており、市の担当者は「地元の人は被害を受けて困っているので、見かけても餌を与えないで」と呼びかけている。【橋本利昭】

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毎日新聞 2023/12/5 08:30(最終更新 12/5 10:45)
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