美容系総合ポータルサイト「@cosme」を運営するアイスタイル(東京都港区)は12月7日、「@cosmeベストコスメアワード2023」を発表した。同アワードは、この1年間に@cosmeに寄せられた口コミ投稿をベースに、消費者が実際に支持している商品をランキング化したものだ。3月にマスク着用が任意となり、人々のメークに対する意欲が回復する一方で、物価高により家計が圧迫されるなど、化粧品業界にとっては、追い風と向かい風の両方が吹く1年となった。

 総合大賞を獲得したのは、スキンケアの老舗ブランドであるオルビスのヘアケア商品「エッセンスインヘアミルク」だった。同商品は2011年発売のロングセラー商品。新商品が次々投入され、数年サイクルでリニューアルするのが一般的な化粧品業界において、発売から12年間、一度もリニューアルを実施していないという珍しい商品だ。

 昨年SNSを中心に「手がベタベタせず使いやすい」「サラサラな髪に仕上がる」などと話題になったことであらためて注目を浴び、知名度や人気が大きく拡大した。アイスタイルの旗艦店「@cosme TOKYO」における売上数は昨年の21倍に跳ね上がり、SNSでの“バズり”を体現する商品となった。

 2位にはコーセーが展開するコスメブランド「コスメデコルテ」の代表的なスキンケア商品「リポソーム アドバンスト リペアクリーム」がランクイン。夜のスキンケアの最後に使用するナイトクリームとして、人気の高い商品だ。

 3位はセザンヌ「超細芯アイブロウ」、4位は2位と同じコスメデコルテ「リポソーム アドバンスト リペアセラム」、5位はクレ・ド・ポー・ボーテ「ヴォワールコレクチュールn」となった。

物価高でも売れる「諭吉コスメ」
 トップ10の商品を価格別に見ると、ある特徴が見えてくる。10商品のうち、7商品がデパコス(主にデパートで販売されるコスメ)と呼ばれる高価格帯の商品なのだ。

 さらに、7商品のうち3商品が1万円を超える「諭吉コスメ」(1万円札の福沢諭吉に由来する表現)でもある。ちなみに、化粧品業界ではドラッグストアで販売されるコスメを「ドラコス」、デパコスとは逆に低価格帯のコスメを「プチプラ(=プチプライス)コスメ」といったような、独特の呼び方がある。

 冒頭にもあったように、化粧品業界も物価高の影響を受けている。実際にアイスタイルが@cosmeユーザーを対象に実施した調査では、37.0%が「物価高騰・値上げによって化粧品の選び方を見直した」と回答している。物価高で化粧品の選び方を見直している人が一定数いるのに、なぜ@cosmeベストコスメアワード2023の上位には高価格帯の商品がランクインしているのか。

 この背景について、アイスタイル代表の遠藤崇氏は「購入時に高い、安いといった価格で考えるのではなく、『この商品を購入する=投資する意味はあるのか』というような観点で考えているのではないか」と指摘する。効果や使い心地などさまざまな観点から「購入=投資すべき」と消費者が判断すれば、たとえ高価格帯であっても購入する。こうした消費者の意向が、「デパコス」「諭吉コスメ」優勢のランキング結果につながったといえるだろう。

 物価高により消費者の目が厳しくなる中で、いかに「投資価値」がある商品を市場に投入し、訴求していくべきか。化粧品メーカー各社の取り組みに注目だ。

12/8(金) 10:00配信 ITmedia ビジネスオンライン
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