決して気持ちのいい言葉ではない。アルバイト漬けの若者たちが自虐を込めた「バ畜」という呼び方が広がっている。
いわば「社畜」のバイト版。
人手不足の陰で、労働力を求める事業者と、生活や推し活のお金を必要とする若者の姿を映し出す。
バイト先に頼られ、断れないまま大学留年の危機に陥いるケースもある。

スマートフォンのカレンダーは毎月、バイトのシフトで埋め尽くされている。
広島市の私立大に通う女子学生(21)は「完全に学校より優先してます」と苦笑いする。

 週6~7日働くのは大手カフェチェーン。新型コロナ禍が落ち着いて増えた外国人観光客にもてきぱき対応し、バイトリーダーに指名された。
土日は派遣の仕事や別の飲食店のバイトも掛け持ちする。終電を逃した日は漫画喫茶で夜を明かし、シャワーを浴びにいったん帰宅した後、また出勤。1日16時間働く。

生活費のためにバイト漬けになり、それだけ大学から足が遠のく。先日、教員に呼ばれた。留年の危機だと告げられた。
いつも睡眠不足で1限目に間に合わず、前期は単位を6個落とした。「まじやばい!」と言いつつ、バイトを辞めるつもりはない。
社会経験が積めて、学びが多い。成長を感じるし、店の役にも立ちたい。

繁華街にある店舗は朝8時から夜11時まで営業し、いつも混み合っている。週末や連休は特に人が足らない。
「誰か出られませんか」と店長が従業員LINEで必死に呼び掛けている。リーダーの責任感が頭をもたげる。
「私が最後のとりで的な感じ。断らないでいたらバ畜になっちゃいました」

安佐南区の男子大学生(21)は過労で体調を崩した。バイト先は中四国地方でも売り上げ上位のファミレスだ。応募時の勤務条件は週2日で1日6時間程度だったのに、気付けば週5日
8時間ずつ働いている。キッチンやホールを1人で切り盛りする「ワンオペ」の時間帯や客からのクレーム対応が少なくない。レジ締めで金額が合わないと残業も発生する。

最近はベテランの扱いになり、休んだり辞めたりする人の穴埋めも頼まれる。
深夜に終わる「遅番」後に早朝の「早番」に入る日も。遅刻しないよう店のソファで、縮こまって寝る。腰と背中が痛くて休んだ気がしない。
逆の勤務パターンもあって体内時計は狂いっぱなし。バイク配達中に目まいがして事故になりかけたこともある。

「正直、バイトを超えた役割を求められてる」と感じるが、シフトを組む際は多く入れる人が優先され、出勤を減らせない。
それに、人繰りが付かないと結局は社員がカバーすることになる。「みんな多忙で疲れてて顔が死んでる。気の毒で断れません」。
この年末年始も3季連続で出勤が決まった。

続きはYahooニュース 中国新聞 2023/12/24
https://news.yahoo.co.jp/articles/2ceebb6bd8af663d9652e7649858d681ba03f23f