進まぬ住宅の耐震化 高齢世帯、空き家がハードル 国目標は95%

 能登半島地震(最大震度7)では、木造住宅の倒壊が相次ぎ、かけがえのない命が失われた。近い将来に必ず起こるとされる「南海トラフ巨大地震」への備えが急務の和歌山市でも、住宅の耐震化率が伸び悩んでいる。市は改めて未対策の世帯に耐震補強を呼び掛けているが、地方に共通するある課題がハードルになっている。【駒木智一】

 和歌山県が2014年3月にまとめた地震被害想定調査報告書によると、南海トラフ巨大地震の際、市内では5万5200棟が全壊すると試算されている。県南部では沿岸部を中心に津波による全壊が多くを占める一方、和歌山市の場合は揺れによる倒壊やそれに伴う火災による焼失が4万5200棟と約8割を占め、能登半島地震の被害像と重なる。


 市は耐震化率を高めることで、巨大地震時の想定死者数を減らしたいと考えてきた。市によると、13年時点で76%だった耐震化率は、20年に87%まで向上した。だが、市住宅政策課の担当者は「耐震化を進める意思のある世帯は既に対策済み」とみる。国は25年度中の耐震化率95%を求めているが、市の試算では89%にとどまる。

 ただ、市も手をこまねいてきた訳ではない。新耐震基準が適用された1981年6月よりも前に建てられた住宅約3万4000戸に対し、2017年から戸別訪問を実施。耐震診断無料化や、耐震改修工事の補助金について説明を重ねてきた。


 しかし、実際に耐震化につながったのは訪問済み世帯の1割程度。古い建物の住人は高齢者が多く、「あと何年生きるか分からない」と耐震化に前向きな人は少ないという。

 国の中央防災会議の南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループで主査を務める福和伸夫・名古屋大名誉教授(地震工学)は、全国平均をわずかに下回る程度の和歌山市の状況を「地方の都市としては健闘している。戸別訪問は一定の成果を出している」と評価する。その理由として、「耐震化が進む最大の要因は改修ではなく建て替えだ。住宅需要の高い大都市と違い、次に住む人が減少している地方で耐震化が進みにくいのは当然」と指摘。人口減少も耐震化が進まない一因となっている。

 一方で、見かけの数字に満足してはいけないという。耐震化率の計算では空き家は対象外となるため、耐震化されていない住宅が空き家になると、耐震化率が向上するからだ。実際、和歌山市の戸別訪問でも、既に空き家になっており、耐震化の話をする相手が見つからないことも。福和名誉教授は「地方では空き家が多く、大半は耐震化されいていない。想定以上に倒壊し、避難の妨げとなる恐れがある」と指摘する。

 では、耐震化を進めるにはどうすればいいのか。福和名誉教授は、「『耐震化する方が得だ』と感じてもらえる世の中に変わろう」と提唱する。「政治家の強いリーダーシップで耐震化の補助率を上げる。例えば高知県では、実質100%に近い補助率を実現している」と話している。

毎日新聞 2024/1/14 13:30(最終更新 1/14 13:30) 1202文字
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