法務省は、法令の英訳にAI(人工知能)を活用する取り組みを始めた。これまでは英訳の公開に平均で約2年半かかっていたが、AIを活用し、重要法令の公布・改正から「1年以内」での公開をめざす。英訳を迅速に公開することで国際取引を円滑化し、海外からの投資を呼び込むのが狙い。来年度には、全省庁に広げたい考えだ。

 政府は2009年、法令の英訳を公開する「日本法令外国語訳データベースシステム」(https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja別ウインドウで開きます)の運用を始めた。国内には8千本あまりの法令がある。昨年11月末時点で、915本の法令や規則を英訳して公開している。

 英訳ではまず、各省庁が、所管する法令の英訳原案を作り、法務省に提出。英語を母国語とし、日米の法律に素養があるネイティブらがチェックした後、公開している。

 原案の作成は民間業者に委託するのが一般的だが、予算などの都合上、委託できる本数に限りがある。そのため、各省庁の職員が通常業務と並行し、自前で原案を作成しているケースもある。英訳の公開までにかかっている約2年半のうち、原案の作成が約2年を占めているという。

 法務省は19年、法令の国際発信を検討する有識者会議を設置。国内外でビジネスに関わる委員らから「翻訳が最新でなければ混乱が生じる」などとスピードアップを求められたため、迅速化の切り札としてAIの活用を検討してきた。

 今年度、研究機関や民間事業者と共同で、法令翻訳に特化したAIのシステムを開発し、昨年12月から試行している。長い法令でも、数時間程度で精度の高い英訳の原案を作れるようになったという。来年度には、これまでの倍以上にあたる320本の法令の公開をめざす。(久保田一道)

朝日新聞 2024/1/14 17:00
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