能登半島地震では、北陸を代表する温泉地の一つで1200年以上の歴史を持つ和倉温泉(石川県七尾市)も大きな打撃を被った。16日現在、旅館協同組合に加盟する大小22の旅館やホテルのすべてが休業に追い込まれている。海沿いの旅館の護岸が崩れたり、建物に亀裂が入ったりと被害は甚大で、営業再開は見通せていない。
◆「新しい和倉をつくる」復興へ決意
 和倉温泉街では道路が隆起し、ひび割れたり、傾いたりした建物も目立つ。ホテル海望は護岸が崩れ、建物の基礎部分が波にさらされている。田中道夫社長(71)は「内海とはいえ、冬は波が荒いので浸食が心配。一刻も早くなんとかしたい」。休業の長期化が予想され、従業員の雇用にも不安を抱える。

 美湾荘も雨漏りや壁のひび割れを確認したが、「和倉温泉を復興支援の拠点にしたい」と多田直未社長。一般客は断っているが、電気や通信の復旧工事に当たる業者らの宿泊を受け入れている。地震直後から断水が続くが、今後は仮設パイプをつないで部屋の風呂やトイレを使えるようにするという。
 組合は国や石川県、七尾市に早急な支援を要望していく。和倉温泉観光協会の多田邦彦会長(72)=多田屋会長=は「長い時間はかかるだろうが、能登の玄関口として『新しい和倉をつくる』という気持ちで一丸となってやっていきたい」と語った。
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◆無事だった源泉「後は時間をかければ直せる」と関係者
 和倉温泉(石川県七尾市)で16日、源泉の無事が確認された。能登半島地震後は旅館に湯が届かなくなっていたが、源泉につながる配管を修理し、湯のくみ上げを確認。温泉街に湯気が立ち上り、復興に向けた一歩を踏み出した。

 和倉温泉合資会社(七尾市)によると、井戸から源泉をくみ上げる配管が地震で損傷し、20軒余りある旅館やホテルに湯を送れなくなった。地震直後から源泉につながる配管4本の確認作業を始め、損傷箇所を修復。16日はうち2本で源泉から湯が通り、90度近い湯が計量マスから勢いよく流れ出した。残り2本も近日中に修復できるという。
 小泉孝史社長(74)によると、和倉温泉は長い歴史の中で湯脈が変わったこともあったと伝わる。今後、各旅館へ湯を供給する配管や湯を冷ますタンクの被害確認を進めるが、小泉社長は「2週間も全ての源泉が止まるなんて経験がなかった。後は時間をかければ直せるので、本当に良かった」と胸をなで下ろしていた。(大野沙羅)

東京新聞 2024年1月17日 06時00分
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