断水続く珠洲市の避難所に常設の薪風呂登場 実現させたボランティア団体 浴室から響いた「幸せ」の声に涙

 能登半島地震の被災地に、災害救援専門のNPOなどボランティア団体が駆け付けている。薪を燃やして湯を沸かす風呂、パワーショベルなどの重機…。最新鋭の装備品を駆使する「技術系」の団体が存在感を発揮している。(臼井康兆)
◆水道復旧のめど立たないが、湧水をドラム缶で沸かし…
 震度6強を記録した石川県珠洲(すず)市。30人超の避難所になっている宿泊施設「日置(ひき)ハウス」に、常設の風呂がお目見えした。
 「今年初めてお風呂に入った」「夜眠れなかったが、お湯につかったらぐっすり眠れた」。被災者の声が弾んでいた。
 日置ハウスは珠洲市の中心部から約10キロ、日本海を望む集落にある。断水が続き、水道復旧の見通しは全く立たない。誰もが驚いた風呂は、一般財団法人「日本笑顔プロジェクト」(長野県小布施町)や特定NPO法人「レスキューアシスト」(奈良県宇陀市)などが実現した。
◆東日本大震災を機に重機も備え
 高さ約90センチ、直径60センチのドラム缶式の風呂2基を、長野県から車で運んだ。薪を燃やして近くの山の湧水を沸かし、湯をハウスの浴室のバスタブに送り込んだ。今後もハウスに常設し、被災者が定期的に入浴できるようにする。
 日本笑顔プロジェクトは2011年の東日本大震災を機に、長野県小布施町にある浄光寺の林映寿(えいじゅ)副住職(47)が立ち上げた。パワーショベルなど自前の特殊車両を備え、運転できるボランティアも養成している。
 能登半島地震では1月3日以降、林さんら10人超が6回にわたって珠洲市入り。パワーショベル2台、ダンプカー2台、バギー1台を伴い、がれきや倒木の撤去など自衛隊や警察の支援まで行ってきた。
◆被災者の声にこたえ、開発進めてきた
 ドラム缶風呂は、今回初めて投入した新装備品。たまたま日置ハウスに浴室があったため、湯沸かし用に使ったが、本来はこのドラム缶風呂で入浴することを想定している。
 「過去の災害で、被災者から『風呂に入りたい』との声が多く、開発を進めてきた。浴室から『あー、幸せ』という声が何度も聞こえて、思わす涙がこぼれた」と林さん。「量産を急ぎ、他の避難所にも配備する。細く長く支援していきたい」と話している。

東京新聞 2024年1月20日 20時13分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/304134