国宝・重要文化財に指定されている木造建造物について、文化庁が耐震補強の指針などの見直しを検討していることがわかった。指針に沿って耐震補強した重文の住宅が能登半島地震で初めて倒壊したため。社寺に比べて住宅系建築は 脆弱 で、その補強を強調することなどを想定する。(多可政史)

 耐震補強は、立地条件や規模、構造を確認する予備診断で問題が見られた場合、より専門的な調査を経て実施される。指針は1995年の阪神大震災を受けて策定。2011年の東日本大震災の翌年に一部、改訂された。診断の手法や留意事項をまとめた実施要領や手引も策定されている。

 能登半島地震では、江戸時代の北前船集落の中核的建物だった重要文化財「旧 角海 家住宅」(石川県輪島市)の主屋が倒壊した。07年の地震でも屋根が崩落し、11年に復旧工事が完了していた。文化庁によると、指針に沿った耐震補強も施しており、そうした建物が倒壊したのは初めてという。

 手引では住宅系建築は社寺建築に比べて柱が細く、倒壊の危険性が高いと指摘されている。今回の被害を受けて有識者と議論し、確認が必要な項目について、注意喚起を強化することなどを検討している。

 実施要領は国土交通省が定めた建築物の耐震基準に準じている。同省が地域ごとの耐震基準を算出する「地震地域係数」の見直しを検討しており、文化庁はこれらの議論を踏まえ、24年度以降に指針や実施要領、手引の見直しの方向性を示す考えだ。

 同庁は不特定多数の人が滞留する国宝・重要文化財建造物の耐震対策で、25年度までの着手率50%、30年度までに100%を目指している。担当者は「文化財建造物の耐震化は急務。能登半島地震の教訓を生かしたい」とする。

読売新聞オンライン
2024/03/30 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20240330-OYT1T50026/