東京都立養護学校の元教員の女性2人が、国歌斉唱時に起立しなかったことを理由に受けた懲戒処分は不当に重いとして、都に懲戒処分の取り消しと、1人300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、東京地裁であった。清水響裁判長は1人について「停職6カ月の処分は不当に重い」とし、処分を取り消した。もう1人については不起立のほか勤務中に「強制反対 日の丸 君が代」などと書かれた服を着ていたことなどを考慮し、「処分は妥当だった」として訴えを退けた。賠償はともに認めなかった。

 判決によると、原告の1人(67)は過去に卒業式などで国歌斉唱時に起立しなかったことを理由に5回の懲戒処分を受けていた。平成20年3月、勤務先の養護学校の卒業式でも起立しなかったため、東京都教育委員会から停職6カ月の懲戒処分を受けた。

 清水裁判長は「不起立を理由に懲戒処分を下すのは妥当だが、不起立は卒業式などを積極的に妨害する行為ではない。停職6カ月の処分は、(最高裁が判示した)『処分の重さの適切性を裏付ける具体的な事情』がないまま、懲戒処分の回数が重ねられたことを理由に形式的に加重したものと推認でき、裁量権の逸脱だ」として、都の懲戒処分を取り消した。

 一方、もう一人の原告(66)は、掲揚された国旗を引き下ろしたり、国旗掲揚に反対するビラをまいたり、研修中に「日の丸 君が代強制反対」と書かれたゼッケンを身につけたりし、過去に7回の懲戒処分を受けていた。20年3月に勤務先の養護学校の卒業式で国歌斉唱時に起立しなかったほか、19年10月以降、「強制反対 日の丸 君が代」や「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」と印刷されたトレーナーを校長の命令を無視して着用し続けたとして、停職6カ月の懲戒処分を受けた。

 清水裁判長は「校長の命令を無視して職務中にトレーナーを着続けた上、過去の懲戒処分には式典を積極的に妨害する行為が含まれている。あえて学校の秩序や規律を乱す行為を行っており、懲戒の頻度も高い」などとして、「処分の適切性を裏付ける具体的事情があり、懲戒権の乱用があったとはいえない」として、訴えを棄却した。

 損害賠償請求については、「処分の重さは不当だったが、不起立は処分対象行為であることに変わりはない」などとして、賠償は認められないとした。

 判決を受け、都は「(原告1人に関して都の主張が認められなかったことについて)判決内容を確認し、対応を検討する」とした。

 処分取り消しが認められなかった原告の元教諭は「納得できない不当な判決で控訴する」と述べた。

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