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[ロンドン 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - サウジアラビアはトランプ米大統領の訪問をきっかけに気持ちが高ぶり、地域内で抱えていたうっぷんを晴らそうとしている。

サウジとその緊密な同盟諸国はカタールと断交し、カタールがテロ組織を支援してイランに融和的になっていると非難した。世界の石油供給の20%を占める地域であっという間に、長く尾を引く敵対の構図が出来上がってしまった。

サウジとカタールの関係は常に緊迫化の火種を抱えていたが、今回の外交関係断絶に至った直接のきっかけは、カタールの国営メディアがいったん伝えた後、公式に否定されたタミム首長の発言だった。報道によると、タミム氏は中東でイランが果たす役割に支持を表明し、トランプ氏を弱虫呼ばわりした。これについてクウェートが仲裁に動いた甲斐もなく、サウジとアラブ首長国連邦(UAE)など同盟3カ国はカタールに対する事実上の経済封鎖を宣言した。

カタールはこれまで頻繁にサウジの鼻を明かしてきた。湾岸協力会議(GCC)で他の加盟国が賛同しない理念を支持するような態度はその最たる例だ。サウジがエジプトのシシ政権を支援すれば、カタールはシシ政権と対立するムスリム同胞団にエールを送った。さらにカタールはパレスチナ自治区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスに近づき、サウジが宿敵とみなすイランとの関係を完全に断つことに乗り気ではない。ただ、カタールはテロ組織支援を否定している。

サウジとカタールでは1970年代以降、国境紛争も断続的に発生してきた。2006年にはカタールからUAEにつながるガスパイプラインを巡り、サウジが主権を侵害されたとして開設を阻止しようとしたこともある。

もしカタールが報復を決断した場合は、このパイプラインが最も役に立つ手段になるだろう。パイプラインはUAEが発電や海水真水化などに使用する天然ガスの4分の1を供給しており、輸送が止まればUAEは自国の天然ガスで代替するか、石油で発電せざるを得なくなる。そうなると、ほんの短期間かもしれないが、原油価格は現状の1バレル=50ドルから上振れしかねない。

GCCは何とかまとまりを保っている程度の国際組織だが、それでもイランに対する防壁としては使える。その存在が、ホルムズ海峡経由で基本的に原油を自由に輸送できる状況を保証している。だからGCCの完全な崩壊は、イランを除けばどの国の利益にもならない。しかし、トランプ氏が間接的ながらも各国の「古傷」をつついてしまったため、GCCがばらばらになる可能性がやや高まっている。

Andy Critchlow

●背景となるニュース

*サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトはカタールと断交した。

*ペルシャ湾岸3カ国は、カタールがテロ組織を支援し、イランと接近し過ぎていると非難した。

*国営サウジ通信(SPA)が伝えた声明によると、カタールは地域の安定を脅かすことを狙っているムスリム同胞団やIS、アルカイダなどのテロ組織を受け入れ、これらの組織のメッセージや計画を自国メディアを通じて積極的に発信しているという。

*カタールはこうした非難は事実に反すると主張している。

2017年 6月 6日 10:44 AM JST