大阪をはじめ、関西で高級食パンの専門店が増えている。もともとパンの消費が旺盛な地域で、ベーカリーショップや専門コーナーは多く、スイーツテイストや欧州の本格的なものが登場したが、ひと回りして食パンに回帰したかたちだ。
 2斤で700〜800円と、スーパーに並ぶ大手の商品よりも価格は2倍ほどだが、行列を作る店も多く、こだわりの材料と製法で人気を集めている。(栗井裕美子)

 ■購入後もおいしさ増す

 大阪市西区に本店を構える食パン専門店「高匠(たかしょう)」。店内に入ると香ばしいパンの香りに包まれる。

 販売するのは食パンのみ(2斤700円)。小麦粉を熱湯でこねる「湯だね製法」を採用しており、ほんのり甘くしっかりした食べ応えだ。購入後も熟成が進んでうま味が増すという。

 常連客の奈良県王寺町のパート従業員の女性(38)は「一度食べたら子供がここの食パンしか食べなくなった」と話す。

 昨年10月の1号店のオープン以降、クチコミで評判が広まり、JR東西線、北新地駅の「駅ナカ店」などすでに計4店舗を構える。

 「高級『生』食パン」を掲げる「乃(の)が美(み)」は平成25年10月、大阪市天王寺区に1号店を開店。2斤864円と高めだが、子供から高齢者まで家族3世代で食べやすいとヒット。現在、全国で52店を展開する。

 ■関西人はパンが好き

 食パンの人気の理由について、食のトレンドに詳しい月刊誌「あまから手帖」の中本由美子編集長は「欧州の本場のパンは行き渡ったので、昔懐かしい食パンに回帰したのでは」と分析する。

 今年で開港150年を迎えた神戸港を擁する関西は、明治初期から在留外国人向けにパンが製造、販売された歴史があり、パンの消費は多い。
 総務省家計調査によると、パンの年間支出額(2人以上の世帯、都道府県庁所在地および政令指定都市、26〜28年平均)のトップは京都市。神戸市、堺市が続くなど、ベスト10に関西から6都市が入った。食パン人気を支える土壌が関西にはあるといえる。

 ■海外展開も

 海外展開を狙う企業もある。食パン専門店「レアリッチ」(同市淀川区)は、昨年1月、店名を変更した。もとは「マーベリック」だったが、桜井明央営業部長は「将来的な海外進出も見据えて、外国人でもなじみやすい名称にした」と話す。

 高匠は今年秋ごろ、シンガポールのスーパーなどで販売を始める方針だ。ハラル認証を取得してイスラム教圏への展開も目指すという。外山高士オーナーは「アジアはあまりパンがおいしくないので可能性が広がっている」と話す。

パンの年間支出ランキング(円)
http://www.sankei.com/images/news/170814/wst1708140074-p1.jpg
2斤700円の高級食パンが人気を呼んでいる食パン専門店「高匠」=大阪市西区の阿波座本店
http://www.sankei.com/images/news/170814/wst1708140074-p2.jpg

配信 2017.8.14 20:14更新
産経WEST
http://www.sankei.com/west/news/170814/wst1708140074-n1.html