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 【ニューヨーク時事】米国には滞在資格のない不法移民が約1100万人暮らしている。

 対メキシコ国境の壁建設などを掲げるトランプ大統領は就任以降、不法移民の取り締まりを強化。学生や長年米国に暮らし、税金も納めてきた「普通の人」も強制送還の危機に直面している。

 トランプ氏の移民政策の一つが、子供の時に米国に不法入国した若者を送還から猶予する措置「DACA(ダカ)」の撤廃だ。対象者は約80万人に上る。トランプ氏は昨年9月、今年3月にダカを打ち切る方針を発表した。一方、米主要メディアの世論調査では、大多数がダカ存続を支持。移民政策をめぐっては、国境の壁建設などの問題もあり、政権や与野党間の調整は難航している。

 5歳の時、両親らと観光ビザで訪米し、ニューヨークに移住した韓国系のステファニー・パクさん(25)は、大学在学中にダカが導入され、ダカ対象者向けの奨学金を取得。卒業後は移民支援の仕事に就き、「ダカが人生を変えた」と話す。ただ、ダカの対象となるには定期的な更新手続きが必要となるため、パクさんは「一時的な措置でなく永久的な解決策がいる」と強調、ダカ対象者の滞在資格を認める法律制定を目指している。

 一方、ダカなどの救済措置対象ではない不法移民は強制送還の不安に直面している。人権団体によると、オバマ前政権下では、重罪犯など脅威となる人物を優先的に送還する措置が講じられていたが、トランプ政権では、長年米国で暮らし、犯罪歴のない人も送還されるようになった。米メディアによると、10歳で訪米し約30年間米国で暮らしたデトロイトの男性(39)が最近、メキシコに送還された。男性には妻や子供2人もいた。

 南部アリゾナ州で人道支援活動を行うマリア・オチョアさん(69)は「通勤時や子供を学校に送り迎えする時に当局に連行されたり、自宅に当局が来たりする」と説明。不法移民に対し、当局が自宅に来ても逮捕状がない限り、ドアを開けないようにとの助言も行われているという。

 送還された移民の中には再び米国入りを目指す人もいる。メキシコ北部の対米国境の町ノガレスで移民支援に当たる米国人女性(76)は、米国入りを目指す送還者から「家族が米国にいるし、それ(越境)以外選択肢がない」と言われたと明かした。