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3月2日 18時27分
愛車を持っている人なら誰でもお世話になる車の整備工場。そのほとんどが零細企業で、今、深刻な人手不足に頭を悩ませています。求人を出しても若い人が来てくれない、仕事の依頼を受けても手が回らない…。そんな厳しい状況にさらに追い打ちをかける事態が起きています。世界の自動車業界で加速する、あの動きです。
(経済部記者 山根力)

あと10年続けられるか

「若い人間がいない、跡継ぎもいないと、やむをえずやめていく会社もあるんです」

福岡市の従業員10人の整備工場「丸善自動車」で工場長を務める原口佳庸さん(38)は、苦虫をかみつぶしたような表情で、深刻な人手不足の状況を話してくれました。

地元でおよそ40年続けてきた原口さんの会社も、整備士が1人、また1人と減り、今は38歳の原口さんがいちばん若手の6人で、なんとか仕事を回しています。それでも最近は、せっかく仕事の依頼を受けても断るケースが増えているといいます。

これではまずいと求人を出しましたが、なかなか働き手は見つからず、今も人員を補充できずにいるそうです。

「少子化だし、職種の多様化もあるけんですね、猫も杓子も人手不足だと思うけど…」と原口さん。これに同僚も言葉を続けました。「あと10年かな、やっていけるのは」

EVシフトの衝撃

「続けられるのはあと10年」

それは、人手不足だけが理由ではありません。原口さんたちの頭を悩ませているのは、自動車業界で加速するEVシフトの動きです。

ガソリンエンジンではなく、電池とモーターで走る電気自動車。整備の方法は大きく変わりますが、原口さんたちに、そのノウハウも必要な設備もありません。

電気自動車など電気で走る次世代の車の整備に欠かせないのが、スキャンツールと呼ばれる診断器。車の中に張り巡らされた電子制御システムのどこに不具合があるのかを見つける機械です。それぞれのメーカーごとに専用のスキャンツールがあり、1台100万円以上します。

車が進化するのに伴って診断器を更新しなければならず、零細の整備工場にとっては負担の重い設備投資になります。しかも、機械を手に入れたからといって、使いこなせなければ意味がありません。

日本でEVが本格的に普及し始めたら、どうなるのかー。原口さんの不安は募るばかりです。

「小さい工場は淘汰(とうた)される方向やけんね。もう修理専門じゃないけど、ディーラーがせんことをやっていくしかないですよね、町工場では」

整備士育成は道半ば

どうすればEVシフトに対応できるのか。

私は、三菱自動車工業が行う自動車整備士の技術コンテストを取材しました。

ことしの課題はガソリンと電気の両方で走る「プラグインハイブリッド車」の整備。40分以内に車の不具合を見つけ出し、修理することが求められます。しかし、参加した16人の整備士のうち、制限時間内に電子回路の断線を見つけ出し、作業手順も含めて完璧に課題をクリアできたのは1人だけでした。
(リンク先に続きあり)