青森市内に住む個人が昨年末、市に寄付した20億円の使途が注目されている。市の予算の60分の1に相当する額で、台所事情が厳しい市にとっては、年末ジャンボ宝くじが当たったようなサプライズ。匿名の寄付者の意向は、「平均寿命最下位」体育施設(アリーナ)の整備や食育事業だが、維持費などがかさむとして慎重な意見もあり、巨額寄付をどう使うか検討する有識者会議まで立ち上がった。

 青森県は、平均寿命が男女とも全国で最も短い「短命県」で、中でも青森市は男性の平均寿命が県内40市町村で最下位という不名誉な状況にある。

 青森市によると、巨額の寄付は、「『短命市』返上を目指し、市民の健康作りとスポーツ振興に役立ててほしい」という趣旨で、昨年12月26日に申し出があった。

 健康増進のために…

 その後、小野寺晃彦市長自ら寄付者と何度か意見交換し、市中心部の青森操車場跡地に、スポーツやコンサートなどの多様な催しに利用できるアリーナを建設する構想が浮上したという。

 青森市によると、総事業費は70〜80億円規模、収容人数は2500〜3000人程度で、市は「アリーナプロジェクト推進事業」として、来年度当初予算案に有識者会議開催などの関連経費約2704万円を盛り込んだ。同じく寄付者の意向に沿う形で、子供の食育事業にも110万円を計上した。

 さらに、寄付金の使途を明確化し、賛同者から寄付を募るため、「市次世代健康・スポーツ振興基金条例」を制定する。

 しかし、巨額寄付とその使途をめぐり、市民の間には賛否両論が渦巻く。

 維持費のメドは?

 本紙の取材に、アリーナ建設“賛成派”からは、「想像もつかない額だが、せっかくの善意。市民の健康作りに役立ててほしい」(30代の女性会社員)▽「寄付なのだから篤志家の意向を尊重すべきだ」(20代の男子大学生)−との声が上がる。

 一方で、「突然、アリーナの話が出て『えっ』という感じ。まさに寝耳に水。寄付金を除いた残りの50〜60億円をどう捻出するのか」(50代の男性会社員)▽「厳しい財政事情で新市庁舎の建設費を圧縮しておきながら、アリーナのイニシャルコスト(本格稼働までに必要な費用)やランニングコスト(維持・運営費用)は市民に跳ね返ってくるのではないか」(40代の自営業男性)−と、新たな負担や将来負担を心配する指摘も出る。

 寄付金だけでは整備費を賄えないことについて、小野寺市長は「国庫補助金の確保など財源を工夫し、できるだけ市民の負担を少なくしたい。箱モノを増やすのではなく、市民体育館の建て替えだ」と説明する。

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