本の街をクラフトビールのメッカに!IT企業がビール事業に参入した理由(03.29)

出版社の業務システム、書店との取次システム、書店でおなじみの書名検索など、出版業界のシステム開発・提供を業務とするIT企業がこの春、クラフトビールを発売する。雑誌DIME5月号でも紹介した光和コンピューターの「光和ビール」である。



「本と同様、ビールも多様性が命。本とビールは実は相性がいい」と代表取締役の寺川光男社長は語る。が、多様性が重要なものはビールの他にもたくさんある。なぜクラフトビールなのか? とたずねたところ、

「佐藤君の造った自家製ビールがおいしくてね」。

佐藤君というのは光和コンピューターのシステム開発を担当する佐藤修さんのこと。寺川社長とは20年来のつきあいになるベテランのシステムエンジニアだ。

3年ほど前のこと、佐藤さんが一般向けの地ビールキットを買って造ってみたところ、予想を上回るうまいビールができた。感激した佐藤さんが寺川社長にも飲んでもらったところ、社長思わず「うまい!」。

成熟市場となり厳しい状況にある出版業界を見つめながら、常々「何か新しいことを始めなければ」と思っていた寺川社長は、このビールで何かできないかと考え始めた。一方、自家製ビールのうまさを知った佐藤さんは、その奥深い世界に魅せられ、ぐいぐい引き込まれていった。ふたりが息統合し、醸造免許を申請したのが昨年の春のことだった。

左が寺川光男社長。右が醸造長の佐藤修さん。

■“本の街”神田神保町を書店文化とクラフトビール文化の拠点に
それにしてもシステム開発を生業とする企業がいきなり畑違いのクラフトビールを造って儲かるのか? というと、もちろん勝算はある。

まず寺川社長の頭に浮かんだのが、近年急速に増えているブックカフェだ。大型書店にはほとんど併設されるようになってきた。ソフトドリンクだけでなくビールやワインを置いているカフェも多い。

「当社とお取り引きいただいている書店さんは全国に約1000店舗あります。従来の書店営業をしながら同時に光和ビールの営業も展開できると考えています」

なるほど。新たに顧客開拓をしなくても、既存の取引先に「ビール、いかがですか?」と営業できる。これは大きな強みだ。

オリジナルのクラフトビールによる新しい商品提案も考えている。

「光和ビール」は小規模なクラフトビールとしてはめずらしいラガータイプ、しかもボトル入りである。ラベルを変えれば簡単にオリジナルボトルができる。

「たとえば出版社とタイアップして、新刊の宣伝に作家の顔をラベルにしたオリジナルボトルをつくることができます」

お気に入りの作家の新刊とオリジナルラベルが同時に楽しめる、そんな“ほろ酔い読書”を提案していきたいとビジョンはふくらむ。出版業界に限る必要はなく、どんな数量限定のオリジナルボトルでも可能だ。たとえば「**会社100周年記念ボトル」「祝**優勝記念ボトル」などなど。小ロット生産ならではのノベルティ化が可能だ。

さらに光和コンピューターの本社は“本の街”神田神保町にほど近く、この立地も活かしたいと寺川社長は話す。

近年、古本屋街としても知られる神田神保町界隈にクラフトビールの出店が相次ぎ、じわじわとビール好きを吸い寄せている。光和ビールは、その中心ともいえるビアバー「クラフトビアマーケット」にも営業中だ。またこの界隈では毎年ブックフェスが開かれるが、こうしたフェスにも出品していきたいと考えている。

「神田神保町を書店文化とクラフトビール文化の拠点にできれば」
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