http://www.bbc.com/japanese/43917821

2018/04/27
スペイン北部パンプローナの裁判所は26日、2016年に伝統行事「牛追い祭り」で18歳(当時)の女性を強姦したとして起訴されていた5人の男に対し、強姦罪について無罪判決を言い渡した。これを受け、スペイン全土で大規模な抗議デモが行われている。

被告5人は性的暴行の罪で禁錮9年の実刑を言い渡されたが、判決が軽すぎるとの意見が多い。
スペインの法律では、暴力や脅迫の事実がない限り強姦罪には問われない。

被告5人はメッセージアプリ「ワッツアップ」上の「ラ・マナダ(オオカミの群れ)」というグループに所属していた。事件が明るみに出ると、スペイン全土で抗議の声が巻き起こった。
被害者の女性と5人の被告は、いずれも控訴する方針だ。

パンプローナの裁判所には、被害者の支援者が判決を聞きに集まった。また、女性権利団体が各所でデモを行った。
首都マドリードやバルセロナ、バレンシアでも、大勢が抗議のために街に繰り出し、「恥だ! 恥だ!」、「NOはNOだ!」、「男性優位の裁判!」などのスローガンを叫んだ。
マドリードでは、下院議事堂に向かって行進する人々を警察が制止しようとした。

女性法曹関係者の組織「テミス」のアルタミラ・ゴンザーロ副会長はEFE通信に対し、「もっと勇敢な判決が必要だった。裁判所がこれほど社会とかけ離れているのは、許されない」と話した。
スペイン社会労働党のペドロ・サンチェス党首はツイッターで「この『オオカミの群れ』がしたことが、無防備な女性への集団暴力でないと言うなら、強姦をどう解釈すべきなのか?」と怒りをあらわにした。

裁判では何が起きた?

5人の被告はいずれも20代後半で、セビリア出身。被害者はマドリード出身。5カ月続いた公判の末の判決読み上げに、5人と被害者は出廷しなかった。
検察側の求刑は禁錮20年以上だった。それに対して裁判官の1人は、被害者の携帯電話を盗んだこと以外は無罪にすべきだと述べていた。

被告らは禁錮9年のほか、被害者女性に5万ユーロ(660万円)の損害賠償を支払うよう命じられた。

事件のあらましは?

事件当夜の映像では、5人の被告がお祭り騒ぎの街をうろついた後、2人が女性の手をつかみ、建物の地下へ連れ込む様子が映されている。
警察の調べによると、被告らは女性を部屋の隅で取り囲み、服を脱がせ、避妊具なしで性交に及んだ。
被告の何人かはその様子を携帯電話で撮影していた。映像は7本で、計96秒間におよぶ。1人はワッツアップのグループ上に、自分たちの行為を祝うメッセージを送り、後で映像を共有すると約束している。

警察によると、映像の中で被害者は「無抵抗、あるいは無表情な」態度を保っており、ずっと目を閉じていた。被告らはその後、被害者の携帯電話を盗んだ。
被害者は現場の外の通りで取り乱しているところを、通りかかったカップルに発見された。公判で被害者は、現在もトラウマの心理治療を受けていると話した。
被告の数人は、別の意識不明の女性にも暴行している様子のビデオにも映っていた。
(リンク先に続きあり)

(英語記事 Thousands protest over Spanish rape ruling)

マドリッドの法務省前でも抗議が行われた
https://ichef-1.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/AC5E/production/_101062144_046439408-1.jpg