https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44412442

フランス・アルペン地方の城で、床板の裏に大工が書き綴っていた秘密の日記が見つかった。19世紀後半のフランスで、村の住民がどのように暮らしていたかを知る貴重な資料だという。BBCパリ特派員のヒュー・スコフィールド記者が解説する。

フランス南部ピコムタル城の新しいオーナーが、上階の部屋の床板を新調することにした。そのおかげで、素晴らしい発見につながった。

はがされるまで誰の目にも触れなかった床板の裏には、鉛筆で長文が書き込まれていた。メッセージは1880〜1881年の数カ月間に書かれたもので、「Joachim Martin(ジョアキム・マルタン)」と署名がしてあった。

ジョアキム・マルタンとは、当時の城主の依頼で床板を張った大工だということはすぐに分かった。残された秘密の日記は、いつか人の目に触れることがあったとしても、自分はそのころとっくに死んでしまっているという前提で、書かれたものだ。

72件の記述には、長いものもあれば、事実だけを書いたもの、さらには書き手の強い気持ちで脈打つような内容のものもあった。ジョアキムは日々の仕事をしながら、思い浮かぶ内容を書き留めていたのだ。

ソルボンヌ大学の歴史学者ジャック=オリビエ・ブドン教授は、「これは普通の労働者、一般人の言葉だ。誰かが読むとしてもずっと後のことだと分かっているので、とても個人的なことを書いている」と説明した。

確かにジョアキムの日記は個人的だ。セックスや犯罪、宗教について(時にはこの3つを同時に!)書いている。そのおかげで私たちは、城壁の外にある小さなレ・クロット村の出来事について、実に珍しい舞台裏をちらりと見ることができる。

最も衝撃的な内容は赤ん坊殺しについだ。ジョアキムは明らかに12年間、この事件を忘れられずにいた。

「1868年の真夜中、馬小屋の扉の前を通りかかると、うめき声が聞こえた。旧友の愛人で、出産の真っ最中だった」
日記によると、この女性は6人の子どもを生み、そのうち4人を馬小屋に埋めた。ジョアキムは赤ん坊を殺したのは母親ではなく、父親で自分の旧友のベンジャミンだとはっきり書いている。そのベンジャミンは、今度は自分の妻に言い寄っているのだと。

「この犯罪者は今、私の結婚生活を壊そうとしている。自分が一言口にして馬小屋を指差せばそれで済む。全員が牢屋行きだ。でもそんなことはしない。幼なじみだし、あいつの母親はうちの父親の愛人だ」
(リンク先に続きあり)

(英語記事 The secrets of a diary written on floorboards)