原価の積み上げではなく、決定された運賃から逆に原価が決まってしまう──。貨物自動車運送事業法が昨年末に改定され、2年以内に標準的な運賃が告示されることが決まったなかでも、トラック運送業界がいまだに抜け出せないでいるのが「逆原価計算」、そしてそれが招いた結果の「乗務員不足」だ。人手不足が懸念される他産業に目を転じると「労務単価」や「職員の処遇改善」といった名目で働き手の給与水準を維持させようとする業界が目立つ。トラック運賃の改定のこの時期、逆原価計算に陥ったまま運賃が低迷しない仕組みづくりを、乗務員の給与水準という観点から検証する。

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 国交省は2月22日、公共工事の予定価格算出に使われる「公共工事設計労務単価」を、平均で3・3%引き上げ、1万9392円に改定し、発表した。労務単価は、建設現場の人手不足対策として事実上機能しており、引き上げが8年連続で続いている。

 労務単価は、国費の適正な使い方を定めた「会計法」や、その関係法令によって定めがあるもの。労務費が適正につかめていなくては公共工事の受注が建設業者の言い値になり、ひいては税金の不適切な支出に与する恐れを排除しようとの考えが根底にある。

 法令の裏づけをもって人材の獲得策につなげられているのは、他にも介護職や保育士などでも見られる。こうした事情について、あるトラック事業者は「今は人手の獲得競争。給与の下支え要素もある、こうした制度のある業界とも競争しなければならない」と、トラック業界にも何らかの対策が必要との見方だ。

 実はトラック運送業にも、「最低賃金」という形で事業者間の競争の土壌を均一していこうというイコールフッティングを目指した制度は存在する。高知労働局が「特定最低賃金」の名称の制度を使い、一般貨物自動車運送事業について定めている「時間給910円」がそれだ。県内の全般の業種に適用される地域別最低賃金762円からみても150円近く高い設定だ。

 トラックの特定最低賃金について詳しい高知ト協の職員によると、制度の創設は平成元年。職員は、「トラックで特定最低賃金制度が設けられるのは高知県だけ。当時、労働組合も強く、労働局も制度を活用したかったように聞いている」などと話している。

 特定最低賃金については、昨年の「働き方改革国会」の審議に対して労働組合側から、「運送コストの一定の比重を占める時間あたり賃金に対する合法的なカルテルとして機能することができる」「特定最低賃金の導入は、運賃水準の確保にもつながる」などとして、公正競争の確保に資するとの見方が示されている。 立教大学経済学部の首藤若菜教授は著書「物流危機は終わらない」(岩波新書)の中で、「人手不足解消のためにも、運賃を引き上げるためにも、業界全体で賃金を上昇させ、それを通じて運賃の値上げを求めていく」ことが、運賃の適正化への道だと説く。

 「昨年の同時期と比べると平均1割ほど運賃は上がっている」。近畿地方の約50台を保有するトラック事業者は、食品から雑貨までの集配業務の受注交渉のなかで、現状をそう表現する。

 問題は、トラックが見つからないことだ。自社で増車するのも視野だが、何せ乗務員が確保できない。2トン車を中心に、「他社も常傭に入っていることが多く傭車の確保もままならない」状況だ。

 運賃は上がった。それでも人が集まらない。人を集めるためには、運賃の引き上げを待たずして賃金を引き上げる、「投資」が必要になってくる。

 特定最低賃金を敷いている高知県のト協職員は、「最低賃金以上に、事業者はもっと賃金を上げている。それでも人が来ない」と、地元の人手不足を指摘。そのうえで、「特定最低賃金を、人手不足解消のための競争力確保のような見方で見るのは30年前の労働者側のものの見方。今、制度を導入しても競争力確保にはならない」と話す。

2019年3月5日
物流ウィークリー
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